電通過労死事件に学ばない日本社会…長時間労働を容認し続ける原因はどこにあるのか

そもそも「36協定」そのものが認知されていない(depositphotos.com)

 労働時間と働き方について議論を巻き起こした、大手広告代理店・電通の高橋まつりさんの過労死事件。7月6日、法人としての電通に対しては労働基準法違反で略式起訴、高橋さんの上司に対しては不起訴という決定が下された。

 しかし7月12日、東京簡裁がこの処分を「不相当」と判断し、正式な刑事裁判が開かれることが決まった。電通の責任が法廷で裁かれ、山本敏博社長も出廷することになりそうだ。

 この裁判の推移も注視すべきだが、日本人の労働のあり方全体についての議論も、より一層深めていくべきだろう。 

「36協定」そのものが認知されていない

 そんな議論を前に進める材料となりそうな調査結果が、このたび発表された。日本労働組合総連合会(連合)による「36協定に関する調査2017」である。

 36協定とは、「労働基準法36条」に基づき、労働者が法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合は、あらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならない――と定められたものだ。

 時間外・休日労働に対するひとつのルールとなっている一方、この協定を結ぶことで実質的に残業時間を法定労働時間を超えて設定できる「長時間労働の免罪符」となってきたという指摘もある。

 だが、今回の調査で明らかになったのは、そもそも36協定の存在自体が、肝心の労働者に周知されていないことだ。

 調査結果によると、「会社が残業を命ずるには36協定を結ぶ必要がある、ということを知らなかった人」は43.5%。「自身の勤務先が36協定を締結しているかどうか分からないという人」も37.6%に上った。「締結していない」と答えた人も17.2%おり、「締結している」と答えた人は半数以下の45.2%にとどまる。これでは、36協定がきちんと機能しているとは言い難い。

 この調査結果に対して、白石桃子・相模原女子大学客員教授は「労働時間についての経営サイドの遵法意識が低いと同時に、労働者サイドも自分を守る安全な労働環境についての意識が低いことがわかる」とコメントしている。

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