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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

蔓延する「薬=悪」説は本当に正しいのか?西洋医学発達前の平均寿命は40歳 

文=新見正則/医学博士、医師
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 つまり、患者さんは治してもらうとうれしいし、そして治ったのは施してもらった治療のお陰だと思いたいし、実際にそう思うのだということです。また治療するほうも、よほど謙虚でいないとついつい自分が行った治療で治したと思ってしまうということです。含蓄ある言葉でしょ。そして、患者さんはよりお金を払った治療により感謝する傾向があるのです。

 つまり、何もしなくて治ったとは思わないのです。そして困ったことに、窓口での支払いが多い治療に感謝をします。ましてや自由診療などでは、その高額な自由診療のお陰で治ったと思いたいのです。病気で困っている人を勧誘するためのHP、とくに自費診療のHPを見ると、たくさんの成功した体験談が載っています。そこに書いてあることは、まったくの嘘かもしれませんが、通常は嘘ではなくて、患者さんが本当にそう思っているのです。お金を使えば使うほど、そのお陰と思いたいのです。そう思わないと納得できないのです」

西洋薬にも漢方薬にも長所短所

 常識君のコメントです。

「西洋薬がすべて害であるというのは、やっぱり納得できません。もちろん諸刃の剣でしょうから、使い方を間違えれば毒になります。漢方だけを盲信している先生は、漢方だけを飲んでいればいいと言い放つ人もいるそうです。しかし、漢方だけで十分であれば、西洋医学が発達する前の、つまり明治の頃の平均寿命が今の約半分の40歳そこそこというのは納得できません。感染症でたくさんの命が失われました。それは世界初の抗生物質であるペニシリンの登場で救えるようになりました。また、たくさんの命を奪った結核もストレプトマイシンの登場で死の病ではなくなりました」

 極論君の意見です。

「僕は極論主義ですが、漢方だけで病気が治るとは思っていません。また西洋医学だけで病気が治るとも思っていません。それぞれに長所短所があると思っています。しかし、最近は薬が過剰投与されていると思っています。老人保健施設などでは必須の薬剤以外をすべて中止したほうが、ずっと元気になると感じている医師は相当数います。フレイルという新しい概念、ざっくり言うと要介護になる前の状態ですが、フレイルでは薬剤の減薬ということも大切な治療方針のひとつになっています。必須のものだけを飲むことが、特にある程度の年齢以上では体にとっては快適なのではないでしょうか」

 極論君が極論君らしくない意見を言ってまとめてくれました。
(文=新見正則/医学博士、医師)

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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