西洋医学と東洋医学との違い
西洋医学と東洋医学は、治療に対する考え方が根本的に異なる。
たとえば、インフルエンザを抗ウイルス薬で治療するのが西洋医学だ。西洋医学は、はっきりとした症状や原因が明らかな病気を薬で治す。高血圧症には降圧剤、感染症には抗菌薬や抗ウイルス薬、がんには抗がん剤と、その症状を薬で取り除く。病気の急性期や感染症治療などの治療には不可欠ともいえる。
これに対し、東洋医学は身体が本来持っている自然治癒力を引き出し、症状を改善する医学だ。検査をしても原因がはっきりしないが、体調不良や症状が続く場合などには、漢方薬の効果が期待できる。月経不順、胃腸虚弱、自律神経失調症、不定愁訴、更年期障害などに用いられるほか、術後のフォローなどにも処方される。
漢方では、身体の状態を表す「証」というものがあり、漢方の処方では証を見極めることが重要になる。証には「実」と「虚」があり、実は体力が充実している人、虚は虚弱の人。また、その中間型もある。実と虚の人は、同じ症状だとしても服用すべき漢方薬は違う。この証を見極めるために、医師は四診と呼ばれる望(ボウ)・聞(ブン)・問(モン)・切(セツ)の診察を行う。望診は顔色や舌の状態を確認し、聞診は声の状態やにおいを診断する。問診は通常の診察と同様で症状の経過や生活習慣、睡眠、食事、便通、排尿の状態までヒアリングする。切診は体に直接触れる触診で、脈や腹の状態を診る。四診の情報から患者の証を見極め、適切な漢方を処方するのが本来の漢方の処方だ。
冒頭の週刊誌の記事でも触れていたが、証に合わない漢方薬を服用すれば、効果がないばかりか副作用などの可能性もある。その指摘通り、漢方薬の効果効能だけで処方することは、危険をはらんでいる。
医療用漢方は、ひとつの症状に対しても複数の薬があり、証によって選ぶべき漢方薬が違う。週刊誌の記事では、医師が漢方の効能効果だけで処方しているような印象の記事となっていたが、すべての医師がそうではない。多くの医師は、しっかりと診察し、証を見て患者にあった処方をしている。ただ、それでも診断した証が違う場合もある。証に合った漢方薬であれば、服用し始めてから効果を感じるまで、そう時間はかからない。あくまで筆者の薬剤師としての経験論でしかないが、1~3カ月服用しても効果がなければ、処方の見直しが必要ではないかと思う。
「漢方薬は危険」というのは誤解だが、「漢方薬は安全」というのも誤解だ。漢方薬を処方された際は、医師に証をどう見極めたかを聞いてみるのもいいだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師)