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裏返しの特権意識
問題は、<例外者>がしばしば特権を要求し、義務からも免除される権利があるはずだと確信していることだ。いわば裏返しの特権意識が強いわけで、それがしばしばトラブルを引き起こす。
たとえば、生活保護を受給しながら精神科に通院していた20代の女性患者は、ホステスのアルバイトで得た収入を申告しなかったため、生活保護を打ち切られたのだが、そのとき彼女は「私が子どもの頃からどれだけ苦労してきたか、わかりますか。家は貧乏だったし、父親には虐待されたし。だから、ちょっとくらいお金を稼いだって許されるはずでしょ」と言い放った。
同じく生活保護受給中の40代の男性患者は、精神科で自己負担なしで処方された睡眠薬や抗不安薬を横流ししていたことが発覚し、生活保護を打ち切られた。彼も「僕がどれだけ苦労してきたか、先生なんかにはわからない。母親は家を出て行ったし、父親は自殺したし。もっと悪い奴はいくらでもいるのに、なんで僕だけこんな目に遭うんですか」と激高した。
このように、自分がいかに不幸だったか、どれだけ苦労したかを強調して、自己正当化しようとする傾向が<例外者>には認められる。もちろん、こうした傾向は誰にでも多かれ少なかれあり、<例外者>は、われわれの胸中の一面を拡大したにすぎない。
世間では、<例外者>の要求する特権が認められるわけではない。また、義務が免除されるわけでもない。それを肝に銘じることが、個々人の幸せにつながるのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
ジークムント・フロイト「精神分析の作業で確認された二、三の性格類型」(中山元訳『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの 』光文社古典新訳文庫)
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