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山本康博「なぜあの商品はヒットしたのか/しないのか」

期間限定品がリスキーである理由

文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役

 毎年クリスマスのシーズンになると、店頭には“今だけ買える”という期間限定パッケージがたくさん並びますが、実はメーカーとしては、販売不調による在庫リスクが大きいのであまりやりたくないというのが本音です。売り場が華やかになりブランドイメージが向上することはとてもよいことですが、そのイベント期間が終わってしまえば、消費者は見向きもしないからです。

 とはいえ、ブランドマネージャー(ブランドオーナー)としては、消費者にお試しで買ってもらえるチャンスでもあります。そこで、期間限定パッケージでは、どのようなものならよくて、逆にどのようなものはリスキーなのかを経験を踏まえて解説します。

期間限定品がリスキーである理由の画像1日本製紙クレシア「クリネックス システィ クリスマス」
期間限定品がリスキーである理由の画像2日本製紙クレシア「スコッティ カシミヤ ルビークリスマス」

(1)季節で区切った季節限定のもの。たとえばウィンターデザインなど。赤地に緑や金色を使うと冬っぽくなります。夏であれば花火のデザインで雰囲気を盛り上げるなど。ただし、クリスマスやハロウィンなどピンポイントにしてしまうと、その日が過ぎてしまうと「なぜ、まだおいてあるのか?」と顧客から言われるので危険。

(2)野球チームや地域のデザインだと、年間通じて売れ続けることができる。よい例だと、阪神タイガース、中日ドラゴンズなどの応援デザインなど。違うチームが好きな人でも、チーム本拠地であればそれほど抵抗なく買ってもらえる可能性もある。富士山や地場の名物デザインなどもよい。

(3)旬のものを使ったデザイン。たとえばポテトチップスの「新じゃが使用」やペットボトル緑茶の「新茶」など、旬な素材が入手できる季節向け。キットカットは深夜1時までオープンしている店舗までつくって、受験シーズンに受験生応援デザインの商品を販売している。ワインのボジョレーヌーボーも旬デザインというより商材として成り立っている。

期間限定品がリスキーである理由の画像3森永乳業「マウントレーニア カフェラッテ カフェココア」

 メーカーはブランドのイメージ向上のためさまざまな施策を打つ。しかし、生産調整がうまくいかないと、時期を過ぎて不良在庫が積みあがってしまう恐れもある。ギフト専用商品というのもクセモノだ。たとえばお中元やお歳暮シーズンの箱に詰められたビールは、シーズンが過ぎると手作業でばらして再販しなければならない。

 購入するお客、贈られて使用するお客と、さまざまな場面で消費者にブランドイメージを訴求できるチャンスなので、メーカーにはリスクと恐れずに、今後も限定パッケージ品を出し続けてもらいたい。
(文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役)

山本康博

山本康博

ビジネス・バリュー・クリエイションズ
代表取締役、損保ジャパン顧問。ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、日本たばこ産業、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本制作。1年以上継続した商品は計算すると3割以上、メーカー側でマーケティング実績35年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、2016年スタンフォード大学 David Bradford 名誉教授、ボストンカレッジ Allan Cohen 教授の推薦書として、世界に向けて英著、 “Stick Out”a ninja in Japanese brand marketingを全世界同時発売開始。『Stick Out~a ninja marketer』(BVC)、現在ブレイク中で話題のAmazon書籍総合1位も獲得したベストセラー『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版)の一人として8月1日執筆など。

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