門倉健、失踪劇の真相は?「うつ病」発表の違和感、別の精神疾患による失踪の可能性も
5月15日から行方がわからなくなり、一時は失踪と騒がれたプロ野球・中日ドラゴンズ前2軍投手コーチの門倉健氏が、6月6日夜に自宅に戻ったと妻が報告した。門倉氏の妻は夫のブログを更新し、門倉氏がうつ病と診断されたと述べているが、今回の失踪劇を振り返ると、その診断に首をひねりたくなる点も多い。
精神科医の高木希奈氏に話を聞いた。
失踪自体が不可解
最近、芸能人や著名人がうつ病であることを報じるニュースが多い。うつ病が「気力、エネルギーを失った状態」に陥る傾向にあることは明らかであり、門倉氏が2~3週間もの間、自らの意思で失踪していたという事実から考えると、うつ病との公表に首を傾げたくなる。
「確かに、失踪するにはかなりのエネルギーを要します。パジャマのまま突然フラッと出て行ったとか、死に場所を求めて1~2日彷徨ったという状態であればまだわかりますが、身なりや荷物を整えて、どういうルートでどこに行くかを考え、交通機関を利用して移動することは、うつ病では難しいのではないかと考えます。重度のうつ病であれば、物事を考えられなくなったり、外出はおろか身の回りのこともできなくなり、寝たきり状態になるケースが多いのも事実です」
妻がブログでうつ病との診断を受けたと発表している件については、どう感じるか。
「本人を診察していないので、うつ病なのかどうかはわかりませんが、少なくとも3週間以上の長期間にわたり失踪していたということは、本人にとってはかなりのストレスとなるような大きな要因があったのだと思います」
うつ病以外の病気による失踪の可能性
インターネット上では、多くの専門家がさまざまな意見を述べているが、なかにはうつ病以外の精神疾患による失踪ではないかとの意見もある。そういった可能性はあるのだろうか。
「可能性としては、回避性パーソナリティ障害、解離性障害で現れる解離性とん走があります」
【回避性パーソナリティ障害とは】
回避性パーソナリティ障害は、批判、否認、避難、拒絶、嘲笑、屈辱など、自分が否定的に評価されるリスクのある、あらゆる状況(対人接触を伴う社会的・職業的活動)を回避することで、その不安感を解消する。「自分は社会的に不適格である」「人間として長所がない」「人柄に魅力がない」「他人よりも劣っている」などの強い不全感を抱いており、確実な安心感を求めるため引っ込み思案になり、新しい活動や交流をしないなど、限定的な生活習慣を好む傾向にある。
【解離性障害】
解離性障害のひとつである解離性遁走は、事件、事故、災害、予想外の死別などトラウマ的出来事からくる極度のストレスにより、突発的に発症する。明らかに意図的に家庭や職場から離れる旅をし、失踪して新しい生活を始めたりするなど、その期間中は自らの身辺管理は保たれているが、その間の記憶は一切ない。通常は2~3日で終わることがほとんどだが、時には数カ月~年単位の長期にわたることもある。ふいに帰ってくることもあるが、その間の記憶は欠如している。
「このどちらも、今回の件に当てはまるかどうかはわかりませんが、もしこれらの疾患だったとしたら、もう少し若年から症状が出現するのが典型的だと思われます」
一時は、事件に巻き込まれたかとも心配された門倉氏の失踪。無事に戻ってきたことに安堵はするが、しばらく真相は闇の中かもしれない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)