そんな彼らの福音になり得るのが、女装男子限定の婚活パーティだ。今年5月にはヘアメイクサロンのRAAR(ラール)と、二村ヒトシ氏が主宰し第1回パーティを開催。当初の予想を大きく上回る女装男性50名・女性60名が参加した。想定以上の動員達成から、8月には2回目開催が決定している。
総勢110名の大所帯、普通の婚活パーティならむさくるしいだろう。だが参加男性は全員女装しているので「女性が大量にいる」ようにしか見えない。さらにフレッシュな香水が漂い、混雑していてもどこか爽やか。強いていうなら、通勤時間帯の女性専用車両のようだった。
女装男子となら盛り上がる女性たち
男性は女装しているからといって、女言葉を使うわけではない。「女としてキレイな外見にするのが楽しいだけで、心は男だから」とある参加者は語ってくれた。フロアでは美女(の格好をしている男性)が「俺、どうしても〇〇ちゃんとLINE交換したかったんだよね。この後、空いてる?」とたくみにアプローチする姿が、そこかしこで見られる。
そして、女装男子だからこその強みもある。コスメや美容など、普通の男性ならまったく触れられないジャンルに詳しいのだ。会場では「その美容液、私も使ってる!」「この服どこで買ったの? かわいい!」と、はしゃぐ男女が見られた。最初から共通の話題があるため、話題のすり合わせから始まる普通の婚活パーティと比べ盛り上がりやすい。ノンアルコールにもかかわらず、現場は大盛況だった。
ニッチな婚活は、婚活疲れの突破口となるか
「婚活疲れ」という言葉がある。何度も初対面の相手と自己紹介を繰り返し、価値観のすり合わせを行うことにくたびれる男女の姿を表したものだ。既存の結婚相談サービスでは、「音楽好き集まれ」「アニメが好きな人の会」など大ざっぱな共通項でしか巡り合えなかった。
しかし、クラシック音楽好きとHIP-HOP好きが初対面で盛り上がるのは厳しい。それでも大手サービスでは集客を見込むため、最大公約数の趣味で切り取らざるを得ない。それに対して現在のニッチ婚活ブームは、ファンの少ない趣味同士でも出会いを確保できるメリットがある。
「優しい人がいい」などとぼんやりした答えを用意しなくてもよい。むしろマニアックな趣味を語っても引かれない。そんな婚活こそ、現代のニーズにこたえる新しいサービスといえるだろう。
(トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事)