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大人気!都心・駅近・格安の「3畳」デザイナーズ・アパートに泊まってみたら納得

文=昌谷大介/A4studio

 トイレは温水洗浄便座付なのは嬉しいが、便座に座ると膝が扉に付きそうになるほどで、かなり狭い。新幹線内や飛行機内のトイレのような感覚と言えば伝わりやすいだろうか。慣れれば気にならない程度かもしれないが、最初は窮屈さを感じるのは否めない。

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最大のポイントは約300cmの天井高とプラス3畳分のロフト

 お次はいよいよ3畳分の居室スペース。

 狭い。噂通りの狭さである。

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 このような3畳の居室という概念が今までなかったため、まず不思議な感覚に陥った。

 第一印象としては、この3畳分の空間を「部屋」と呼ぶには違和感を抱くほどで、率直に言って「物置」という表現のほうがしっくりくると感じるほど。

 だが、意外かもしれないが、圧迫感はない。狭さは感じるが、狭いながらのコンパクトにまとまった居心地のよさがあるのだ。

 その秘密はすぐにわかる。天井がかなり高いのである。

 この「QUQURI」シリーズの部屋は、全て300cm前後の天井高があるのだという。最近のマンションの天井高は250cmほどが多く、古いアパートやマンションだと220cm以下ということもあり、天井高が10~20cm違うだけで圧迫感がかなり軽減されるものだ。つまり、天井は(いい意味で)異様なほど高く、開放感を感じられるのである。

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 面積は約9平方メートルだが、その9平方メートルに対しての体積は非常に大きいというわけだ。

 そして、もう一つの注目ポイントはロフト。このロフトも約3畳分のスペースがあるのだが、こちらは高さが最大140cm(物件により異なる)あるため、居心地抜群。さすがに立って歩くことはできないので移動時はかがみながらになるが、座ったり寝転んだりしている分には充分なのである。秘密基地感もあり、コンパクトなスペースが苦にならない人にとっては、むしろ居心地がいいのではと感じるほどだった。

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 ちなみにこのロフトスペースは、先ほど紹介した玄関、ミニキッチン、シャワールーム、トイレなどの真上に位置するのだが、このロフトを“1室”と考えることができれば、3畳が2部屋あるという感覚で住むことができるだろう。実際の生活スペースは6畳分(居室3畳+ロフト3畳)あるともいえ、一般的な6畳ワンルームの暮らしと比べてもさほど遜色ないと感じた。

 追加の難点を挙げるとすると、収納スペースの少なさだろうか。玄関脇などに小さい収納はあるが、容量的にたくさんの物をしまっておけるわけではない。居住するとなると、できるだけ持ち物をミニマムにし、さらに“見せる収納”を心がける必要があるだろう。テレビは大型を選ぶとかなり圧迫感が出てしまうため、実際に住む場合は小型のモノを選ぶことになりそうだ。もっとも、「QUQURI」に住む若者たちは、スマホやタブレットPCなどがあればテレビを必要としないことも多いという。

ロフトで就寝するも…最も想定外だったのが隣接住人の生活音

 一泊させていただくわけだが、持参したのは仕事用のパソコンと寝袋のみ。家具やインテリアは一切ない状態の部屋で、特にやることもないため、3畳の居住スペースでパソコンを開き、仕事を始める。余談だが部屋にはもちろんエアコンが備え付けられており、部屋が狭いためかすぐに快適な室温にしてくれた。

 筆者は自炊しないため、夕食は自由が丘駅周辺で外食をしようかと考えていた。だが、徒歩13分という微妙な遠さのエリアまで足を伸ばすのが億劫になり、けっきょく徒歩3分の最寄りのコンビニで弁当類を購入し、夕食をすませた。せっかくなので自由が丘ライフ気分を満喫したかったが、往復30分弱かかるという事実に屈したかたちだ。

 さて、夜も更けてきたため、就寝することに。ロフトスペースを寝室代わりに使う住人が多いとのことだったため、筆者もロフトで寝ることにした。先ほども伝えた通り、140cmの高さがあるため寝床として使う分には一切不自由さは感じない。ありがたいことにロフトスペースに照明もコンセントも設置されており、よりいっそう“2部屋め”という感覚を与えてくれる。

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 エアコンも快適に効いているため、ぐっすり眠れる……かと思われたが、ここでもう一つ、デメリットを挙げておきたい。パソコンで仕事をしているときから気になっていたのだが、この「QUQURI」のアパートは木造のためか、隣接する部屋の住人の生活音がかなり聞こえてくるのである。

 ロフトにいると特になのだが、上階の住人の足音やロフトのハシゴを登り降りする音などがかなり響いて聞こえるのである。そのほかにも、隣接する住人の話し声や、シャワーやトイレを使用した際の水の音も聞こえてくる。

 そして、上階や隣接する部屋の住人の生活音が漏れ聞こえるということは、当然ながら自分の生活音も漏れている可能性が高いということでもある。「QUQURI」に実際に住むとなると、スマホで話すときは声の音量を多少気にする必要があるし、深夜に友達を招いてドンチャン騒ぎの飲み会などはもってのほかだし、結果的に“静かに生活するクセ”がついていくのだろう。

 これらの生活音問題はこの3畳ワンルームの部屋に限った話ではなく、格安アパートなどの物件にはよく付いて回る問題ではあるが、いずれにしてもそういった生活を窮屈に感じてしまう人には不向きかもしれない。

 さすがに深夜帯となると、周囲の住人たちの生活音もかなり減少したため、落ち着いて就寝することができた。

 余談だが、朝起きてロフトから居住スペースに降りる際、ハシゴから足を踏み外しそうになり、少々ヒヤッとした。朝一で寝ぼけているときや、泥酔して帰宅した際などは、このハシゴの昇り降りは注意が必要だろう。

結論――3畳ワンルームは“アリ”、メリットが上回る理由

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大人気!都心・駅近・格安の「3畳」デザイナーズ・アパートに泊まってみたら納得の画像18(※こちらの画像は3畳ワンルームアパートの実際の住人の画像です。今回の一泊体験レポート時の画像ではありません。)

 さて、3畳ワンルームに一泊体験し、デメリットも含め、感じたことを率直にリポートしたわけだが、最後に総括的な感想をお伝えしようと思う。

 結論から言うと、「QUQURI」での生活は“アリ”と感じた。

 筆者のようなアラフォーともなると、このような生活に拒絶反応を示す人もいるかもしれないが、「QUQURI」がメインターゲットとしている若者であれば、デメリットよりもメリットを感じることのほうが多いだろう。筆者が20代の頃にこのような物件があれば、筆者も住んでいた可能性は高いと感じたほどだ。

 “3畳ワンルーム”という言葉の響きが、必要以上に狭さを感じさせるフレーズのため、とても窮屈な生活を強いられるイメージがあるかもしれないが、実際はそこまで狭さを感じないというのが最大の理由だろう。

 前述したように天井が高いため3畳の居室スペースに圧迫感はなく、さらに同じく3畳ほどのスペースがあるロフトを“もう一部屋”のような感覚を持てるため、実質は6畳ワンルームの暮らしとさほど変わらないのである。

 そしてもちろん、自由が丘駅や恵比寿駅、中目黒駅など、都内屈指の人気駅の徒歩圏内で、近隣の相場と比べかなり割安で住めるというのも大きなポイントだろう。今回一泊した部屋も、自由が丘駅まで徒歩圏内で、築浅で小綺麗であり、この物件が6万円台。ストロングポイントなのは間違いない。

 ほかの部屋の住人の生活音がかなり聞こえたのは想定外ではあったが、シャワールームに浴槽がないこと、収納スペースが少ないことなどは入居前から確認できる要素であるため、この部屋を借りようと検討している人にとっては、さほどデメリットに感じないように思う。

 最後に、「QUQURI」の開発を手掛けているスピリタスの広報担当、木本理恵さんに話を聞いた。

「『QUQURI』の入居者様は20代がメインなのですが、なかには以前、シェアハウスでルームシェアをしていたという方もいらっしゃいます。もちろんシェアハウスにはシェアハウスのメリットがございますが、シェアハウスはリビングやキッチンやトイレやバスルームが共用であったり、生活をともにする方々とのコミュニケーションも必要になってきます。ですから、ルームシェアに住んでみたものの、そういう部分にめんどくささを感じ、自分のライフスタイルには合わないと退去した方が、次に選んでいただくのが『QUQURI』というケースも少なくないんです」(スピリタス広報・木本氏)

“ルームシェア疲れ”をした若者の受け皿にもなっているということか。また、勤務地が都心で自宅が郊外という方からは、セカンドハウス需要もあるそうだ。

 しかし、この3畳ワンルームタイプが人気を博すと、競合他社が類似コンセプトのアパートやマンションの開発に着手するという可能性もありそうだ。

「実は、弊社では先日、“ひとつの土地に対して面積が9~13平方メートルの小さな住戸を、できるだけ多く配置する共同住宅の設計方法”における特許を取得しております」(同)

 なるほど、参入障壁もきちんと設けているようだ。

「現在は一般の居住用として入居していただいておりますが、ゆくゆくは個人事業主様やベンチャー企業様へのオフィス貸しなども視野に入れております。インターネット無料で都心のアドレスを割安で持てるという点で、需要があると考えております。また、ゆくゆくはホテル化していく予定もございます」(同)

 仮に若者たちからの住居としての需要が減退しても、次の一手はすでに考えているとのこと。将来のビジネスプランも抜かりはないようだ。

 不動産業界に彗星の如く現れた3畳ワンルーム「QUQURI」の快進撃は、今後も続いていきそうである。
(文=昌谷大介/A4studio)

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