「自分で選べる」という感覚と落とし穴
3つ目の理由は、出会いの選択肢があるように感じられることである。結婚相談所はどうしても「親や仲人が選んだ相手と出会う」感覚をぬぐえない。一方、アプリは登録した瞬間にずらりと異性の顔写真が並び、自分が選んだ相手と連絡を取ることができる。自由恋愛が普通の感覚で育ってきた40代以下にとっては、「選べる」アプリのほうが圧倒的に満足度も高い。
百聞は一見に如かずというわけで、筆者も前述の「Pairs」を体験してきた。登録は無料で、他のSNSで登録している知り合いを、最初から出会わないよう除外してくれる。知人・友人にばれずに婚活ができるのがありがたい。
離婚歴、子どもの有無、身長・体重、学歴などの肩書きと、自由入力のプロフィール、そして写真を投稿する。するとすぐに大量の男性からアプローチが来た。これは筆者が特殊なのではなく、気軽にアプローチできる仕組みとなっているため、男女ともに通知は多いとみられる。
アプローチを承認すると、そこからメッセージをやりとりできる。ニックネームでやりとりを開始できるため安全だ。この時点で危なそうな人は除外すればよい。そこから会話が続く人だけが残り、実際のデートへつながっていく。
子の「ネットで出会った」を快く受け入れて
結果として、筆者は1カ月で8名と出会った。どなたも素晴らしい男性で、「独身でいてくださってありがとう」とこちらが感謝したくなるような方ばかりだった。いわゆるネットの出会いにありがちな「怖い」「想像と違った」という経験は皆無。おそらく事前にメッセージのやりとりで危ない方を排除できるのが大きい。規約違反をする方は通報できるシステムとなっており、婚活を継続できないしくみだ。
Pairsで真剣に相手を探し、自分の性格さえ許容してくれる方にお会いできれば成婚できるだろう。だがここで、壁にぶつかる子は多い。親へ「ネットで出会った」と言えないという壁だ。実はこの種の相談を、私は大量にいただいている。2000年代に横行した出会い系アプリの犯罪で「ネットでの出会いは危ない」と考える方も多いからだ。
だが、親の方には、子の「ネットの出会い」を許容してほしい。今の若者にはカネもなければ出会う時間もない。枕でゴロゴロしながらでも相手を探せ、成婚へたどり着けるならこれ以上のことはない。子が「彼女・彼氏ができたの。アプリで出会ったんだけど」と言ってきたら、普通の出会いと同じように祝福してほしい。これが現在婚活をしている世代からの切なる願いである。
(トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事)