本当に日本人は働きすぎなのか? 言ってはいけない、有休消化率が低い「本当の理由」
祝祭日が少ない国でも、長い夏休み等を皆が取得し、しっかり有給休暇を消化する文化のある国々では年間の休み日は多くなります。例えば、フランスは祝祭日11日と有給取得率100%(30/30日)で41日間の休み日、オーストラリアは約10日の祝祭日と有給取得率100%(25/25日)で35日間の休み日となります。
一方、アメリカは祝祭日が10日で有給取得率80%(12/15日)と合わせても年間の休み日は22日間のみです。また、祝祭日が7日間ともっとも少ないメキシコは、有給休暇率86%(12/14日)と合わせても年間の休み日は19日のみです。
有給休暇に上限がない米国ベンチャー企業
このように、有給休暇と祝祭日を合わせて考えると、日本人は有給休暇消化率は低いですが、決して働かない日が少ないわけではないと言えます。一方、アメリカとメキシコの労働者たちは、実際の休み日は日本よりも少ないですが、日本人よりも働きすぎと言われていることを私は聞いたことはありません。
そもそも、仕事とは働いた時間ではなく、働いた結果や成果物などをもって、生産性として評価されるべきではないか、との議論もあります。近年、米国のITベンチャー企業では、有給休暇に上限を設けるのではなく、仕事をしていれば(つまり結果や成果が伴えば)、何日でも有給で休暇を取得可能という企業もあります。
一方、多くの日本企業では、この結果や成果の評価基準が曖昧なため、オフィスに滞在していることが「見える化される仕事」として、そして結果として評価されているような気がします。それが、有給休暇を取得しない(できない)理由に見えてしまいます。
このような日本の企業文化こそが、有給休暇取得率が低いことを「日本人は働き過ぎ」と結びつける思考につながってしまっていると思わずにはいられません。
(文=武神健之/医師、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事)
(参考資料)
【世界30ヶ国 有給休暇・国際比較調査2017】日本の有休消化率、2年連続 世界最下位
Countries With The Most Public Holidays
マーサー、年間祝祭日数世界ランキングを発表 2014
「労働基準法等の一部を改正する法律案」について