一方、中間リスク、高リスクの患者さんにはロボット手術を含む前立腺全摘出手術や外部からの放射線照射治療などが選択肢としてあります。ただし、これらの治療では30~50%程度のがん再発が報告されています。治療法ごとに再発の原因は異なります。全摘手術では、がん細胞が切除しきれずに体内に残ってしまうことが主な再発要因です。放射線照射治療の場合はがん細胞を死滅させるための、充分かつ適切な線量が照射されていないことが主たる再発原因です。
――患者の立場からすると、治療受けたあとも30~50%の再発リスクがあるのでは、すごく不安を感じますね。再発すると、前立腺がんの場合どのような問題があるのでしょうか。
岡本 再発すると、生涯ホルモン治療を受ける必要が生じる可能性があります。長期のホルモン治療により老化が進行し、心臓疾患や糖尿病などの発生リスクが高くなります。さらに「去勢抵抗性前立腺がん」という致死率の極めて高い病態を引き起こすことが知られています。ですから最初の治療で、「再発の少ない治療法」を選択すべきである、と私は考えます。
「岡本メソッド」
――岡本教授による「密封小線源療法」は「岡本メソッド」とも呼ばれ、高い治療実績を残されている、と聞きました。高リスク前立腺がん患者さんの再発率はどのくらいなのでしょうか。
岡本 私の患者さんは5年後再発率低リスクから高リスクまで総計で2%ほどだと思います。高リスクの患者さんについても、再発率は5%以下です。再発された方のほとんどは、もともと画像に写らない転移が隠れていたケースですので、基本的には転移のない状態で発見された方は、たとえPSAが100を超えていても確実に治るという実績を持っています。
――高リスク前立腺がんの患者さんでも、岡本教授の「密封小線源療法」で治療を受ければ「95%以上再発しない」ということですね。「密封小線源療法」について詳しく教えてください。
岡本 「密封小線源療法」では4ミリほどのチタンカプセルを50から百数十個前立腺内に永久挿入して、がんを死滅させる方法です。私は2007年から「密封小線源療法」のパイオニア、ネルソン・ストーン教授の指導を受けたのち、私が独自に開発した高い線量を安全に投与できるプログラムを実施しています。直腸にエコー端子を挿入し、前立腺を映し出します。その画像を見ながら線源(シード)を前立腺内に留置していきます。