自傷行為は簡単に流行となる。そして、リストカットを含めた自傷行為は、そのなかでもリスクが高い行為だ。実際に死のリスクが高まるだけでなく、深く切れば痕が残る。手首に残るリストカット痕は就職や結婚で障害となり得る。そして、痕が残るからこそ、10代は「のちのことまで考えられないほど病んだ自分」として手首を切りたがってしまう。
リストカットを止めるには
もし、あなたの身近にリストカットをする10代がいるなら、その子が病んでいるのか、「ただ流行に乗ったのか」を把握してほしい。学校ではやっているのであれば、一斉調査で禁止しても問題ない。
だが、もしその子の自己愛が傷ついているなら――リストカットを止めたところで、ほかのより過激な行為におよびかねない。今は「リストカットをすることで、それ以上激しい自傷行為をせずにすんでいる」状態かもしれないからだ。もし傷つきが見られるならば、まずはほかの発散方法を一緒にやってみる。たとえば好きなものを思い切り食べてもいい、高級なコスメをプレゼントして「消費の喜び」へ逃がしてもいい。
そういうメンタリティのときに、筋トレやカラオケのように健全な手段は選ばれにくいので、多少発散方法が偏っていても認めるくらいがよい。筋トレでどうにかなるくらいなら、そもそも手首は切っていないからだ。
愛ある言葉で、リストカットから卒業してもらう
ストレスのはけ口を共に経験しつつ、「あなたが手首を切るのをやめろとは言わないけれど、それをされると私は悲しい。なぜなら、あなたのことを愛しているから、あなたが傷つくと悲しい」と伝えよう。リストカットが常習化した子ほど、周囲が「また手首を切るのか、どうせそうやってワガママを通したいんだろう」と冷淡になることで、さらに傷ついていく。
リストカットをする子の主張をすべて聞き入れることはない。ただ、「やめろとは言わない。ただあなたを愛しているから、手首を切られたら悲しい」という愛情あるメッセージを一貫して伝えることが望ましい。なぜそんなことをするのか、と怒りをぶつけるのはやめておこう。リストカットの当事者にそれを愛のムチと受け止める余力はない。
リストカットの流行する場所には、必ず本当に傷ついている子が交ざっている。一律禁止で対応するのではなく、傷つく子を見つけること。そして愛ある意見を伝えよう。根気のいる対策だが、それによって救われる命がある。
「リストカット大流行」の文字が並ぶ前に、警鐘としてこの記事が貢献できれば幸いだ。
(トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事)