中西貴之「化学に恋するアピシウス」
知られざる“果物”アボカドの秘密…脂質量はサーロインステーキ並み?白血病治療に寄与も
文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部
15年にアボカド成分として発見されたアボカチンBは、エネルギーとしての使い勝手が悪い脂肪酸です。白血病がん細胞はエネルギー効率の良い脂肪酸と悪い脂肪酸を区別できないため、アボカチンBを取り込んでしまうとミトコンドリアは十分にエネルギーをつくり出すことができなくなり、細胞の元気がなくなります。結果として、抗がん剤への抵抗性獲得が進行しにくくなるのです。
実際に白血病がん細胞を使って実験で確認したところ、予想通りアボカチンBの存在によりミトコンドリアは元気がなくなり、抗がん剤シタラビンの作用が強まることが確認されました。実際に患者で効果が見られるかどうかは今後の研究課題ですが、高齢者など一部の患者では体力的に十分な抗がん剤の投与ができないこともあるため、そのような患者にはアボカチンBの併用で薬の効果が強まるかもしれません。また、アボカチンBによって抗がん剤の量を減らすことができれば、副作用で苦しむ患者も減らすことが期待できます。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部)
【参考資料】
「アボカドの輸入について」(税関)
「アボカド由来の成分が抗がん剤の効果を高めることを発見」(順天堂)
「食品成分データベース」(文部科学省)
『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』(共立出版/Harold McGee 著、香西みどり監訳、北山薫、北山雅彦訳)