今月9月11日、株式会社カネボウ化粧品は、自社商品が原因で肌が白くなる「白斑」被害が相次いでいる問題について、外部の専門家等による調査報告書を発表しました。
その中で報告書は、昨年9月の時点では、医師から「因果関係は断定できないが」という留保つきながら「化粧品がトリガーになった可能性がある」という指摘があり、さらに、今月9月には、「確定的にその因果関係を認識」との指摘があったにも関わらず、事実関係の発表や商品の自主回収まで2カ月近くかかったことについて厳しく批判しています。
カネボウの発表によると、「白斑」の被害者は、今月9月1日時点で9959人とのことであり、そのうち、「白斑が3カ所以上ある」「5センチ以上の白斑がある」「顔に明らかな白斑がある」などの重症者は3分の1近くに及ぶとのことです。
問題を認識しながら(または、容易に認識することができる立場にありながら)、これを合理的な理由もなく放置したカネボウの対応は、前記の報告書によらずとも“お粗末”であったことは明らかです。
当事務所にも、今年7月の自主回収発表以降、「白斑」に関する法律相談の問い合わせは36件あり、弁護士による法律相談の数は19件に及ぶなど、事件の反響の大きさを物語っています。
化粧品という身近で毎日使用する必要性の高い商品が原因だけに、一般の消費者に与えた影響は甚大です。
ところで、こういった「一般の消費者」が「被害者」となる事件は、今回に始まったことではありません。
古くは昭和40年代、食用の油に有害物質が混入し、その結果として濃い色素が沈着した赤ちゃんが生まれ社会問題に発展した「カネミ油症事件」や、最近では平成12年に近畿地方を中心に発生した「雪印乳業食中毒事件」が記憶に新しいところです。
このような健康被害は、過去に何度も繰り返されているにも関わらず後を絶ちません。
●誤情報に惑わされない
では、「一般の消費者」は、どうやって健康被害から自分の身を守ればよいのでしょうか。水や食品類、歯磨き粉やクリームといった、毎日口にしたり欠かさず使用する商品に、万が一生命や身体にとって「有害な成分」が混入してしまっていた場合、「一般の消費者」はいかにして対応すればよいのでしょうか。
確かに、「一般の消費者」にとって「被害の発生」自体をあらかじめ完全に防止することはとても難しいですが、「被害の拡大」を防止することは、さまざまな工夫によって可能です。
一つには「情報の取捨選択」です。今日、商品の情報は企業の広告などから得られる情報以外にも、インターネット上の口コミサイトやランキングサイト、個人のブログといった情報が氾濫しています。
そして、人は誰しも「自分にとって都合の良い情報」を信じやすい傾向にあり、「健康」「ダイエット」「美白」「効果抜群」「○○ランキング1位」「○○に効く」「〇〇(有名人)も使っている」といったキーワードは、どうしても消費者の購買意欲をかき立てます。
しかしながら、これらの情報は出所自体が不明瞭ですし、なんの責任も負っていません。また、これらの商品は、万人の体調や体質にマッチするように開発されたものではないことも理解しなければなりません。
そして、もしも現在消費したり使用したりしている商品で少しでも体に異常を感じた場合には、これらの情報に惑わされることなく、「正しい情報」を取得するよう努めることが重要です。要するに、ランキング1位だから問題はないはずだ、インターネットの口コミでは悪いことは書いてないから大丈夫だ、ちょっと異常を感じたけど、あと少し摂取し続ければ効果が表れるはずだ、といった安易な考えは禁物ということです。
そして、「正しい情報(特に、現に健康被害が発生している商品について)」は、例えば以下のようなサイトから取得することができます。
・厚生労働省の食品安全情報サイト
(www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen)、
・内閣府食品安全委員会のサイト(www.fsc.go.jp)
・消費者庁のサイト(www.caa.go.jp)
・国立医薬品食品衛生研究所の食品に関する情報サイト(www.nihs.go.jp/hse/food-info)
・(独)国民生活センターのサイト(www.kokusen.go.jp)
●利用開始時期をリストアップ
次に、家庭で継続的に摂取している食品類(定期購入しているミネラルウォーター、家族で好んでいるヨーグルト、愛用している食用油など)や、継続的に使用している商品(比較的、長期にわたって使用する消耗品であるシャンプー、歯磨き粉、洗剤など)を「利用開始時期」とともにリストアップしておきます。
そして、もしも体に異変を感じたら、すぐにこのリストを持って医療機関に赴きます。医師はこのリストと症状を見比べて原因を探ることができますので、比較的短期間に健康被害の原因特定が可能になります。
また、ほかにも「大量買い」をしないことで、生命や身体にとって「有害な成分」が混入してしまった商品の「ロット」だけを摂取・使用し続けてしまうのを防ぐこともできます。
このように、ちょっとした工夫で重篤な健康被害を未然に防ぐことは十分に可能となります。
そして、万が一、健康被害が発生してしまった場合には、早めに専門家に相談することも肝要です。その際、前記の「リスト」が原因を特定し、被害との因果関係を証明するための重要アイテムになるのは言うまでもありません。
(文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ・パートナー弁護士)
●弁護士法人アヴァンセリーガルグループ
東京、大宮、大阪に拠点を持つ、法律のスペシャリスト弁護士法人。特に企業法務全般、交通事故・医療過誤等の一般民事事件、および離婚問題・相続問題等の家事事件に強みを持つ。また、無料法律相談も常時受け付けている。