フィッシュフライを使用したフィッシュバーガーは一定の支持を集めているが、やはりハンバーガーと聞くと肉のイメージが強い。ガッツリ食べたい時は肉汁たっぷりの牛肉や鶏肉を挟んだハンバーガーを選びたくなる。
しかし、10月1日にドムドムハンバーガーが発売した「びたびたバターフィッシュ」は、全長25センチもあるスケソウダラのフィッシュフライを使用したインパクト抜群のビジュアル。1個だけでも腹いっぱいになれるボリューム満点のフィッシュバーガーだ。
とはいえ、フィッシュバーガーをあまり食べたことがなく、味に不安を持っている人も多いのではないか。そこで今回は、マクドナルドとモスバーガーのフィッシュバーガーと比較して、「びたびたバターフィッシュ」について実食レポしたい(価格は税込み)。
モスバーガー フィッシュバーガー/380円
まずはモスバーガーの「フィッシュバーガー」。とにかくマヨネーズが大量に塗られており、マヨネーズ好きにはたまらない。ザクっとカットされた玉ねぎは歯応えが気持ち良く、バンズもフワフワしており、いろいろな食感も楽しめる。
しかし、肝心のホキを使用したフィッシュフライは若干パサパサしており、フレッシュさはあまり感じられない。フィッシュフライ自体も薄味なため、マヨネーズの量に圧倒されてしまい、マヨネーズを塗ったバンズを食べている感覚になる。一応、チーズも挟まっているが、チーズも味負けしており、そこまで風味は感じられない。
注文する際にマヨネーズの量を調整してオーダーしても良いかもしれない。
マクドナルド フィレオフィッシュ/370円
次はフィッシュバーガーの王道「フィレオフィッシュ」をいただく。スケソウダラのフィッシュフライは、モスのフィッシュバーガーよりも衣がサクサクしており、白身魚もプリプリしている。
ただ、「フィッシュバーガー」と違い、こちらは塗られているタルタルソースの量がなかなか少ない。ピクルスや玉ねぎも使用されているが、細かく刻まれすぎているのか、そもそもそんなに入っていないのか、タルタルソースというよりも“マヨネーズとクリームチーズを混ぜたソース”となっている。野菜の食感や味わいはあまり印象に残らなかった。
ソースが少ないため食べやすさがあり、小腹が空いた時にはピッタリだ。一方、ガッツリ感を求めたい人やタルタルソースを期待した人はガッカリするかもしれない。
ドムドムハンバーガー びたびたバターフィッシュ/590円
最後はドムドムハンバーガーの「びたびたバターフィッシュ」。全長約25センチとのことだが、実際に測ってみるとその看板に偽りなし。「フィッシュバーガー」や「フィレオフィッシュ」はどちらも約10センチだったため、他のバーガーの倍以上のサイズだ。
フィッシュフライは衣がサクサク、というよりはザクザクしており、噛むたびにボリボリ音が鳴る。その食感はとても心地よいが、職場や学校など密集した空間で食べると、予期せぬ注目を集めるかもしれない。肝心の味は白身魚が新鮮であり、“びたびた”に塗られたバターと相性抜群。
しかし、フレッシュさと塩味を堪能できるものの、いかんせんフィッシュフライが大きいため、どうしても飽きがきてしまう。ようやくバンズに辿り着くと、千切りキャベツの爽やかさに安心感を覚えるが、バンズもバターを大量に吸っており、どうしても“重さ”を感じる。バター好きだったり大食いだったりすれば満足できるバーガーではあるが、小食な人は計画的にオーダーしたほうが良い。
ちなみに、包み紙だけでなく「びたびたバターフィッシュ」の入った紙袋までバターが染みるほど“びたびた”なので食べる際には注意しなければいけない。テイクアウトして家で食べる場合には、皿に載せてナイフとフォークを使って食べても良いのではないか。
数年前にボツになったメニュー
ところで、なぜ「びたびたバターフィッシュ」という前衛的なメニューが誕生したのか。商品開発の責任者であり、ドムドムフードサービスの取締役・浅田裕介氏に話を聞いた。まず、「びたびたバターフィッシュ」を発売した経緯について、「実は3~4年前に企画したメニューなんですよね」と話す。
「当時は大きなフィッシュフライ、チーズ、キャベツ、タルタルソースを使用したハンバーガーだったのですが、『こんなのどうやって食べるんだ!』と言われて即刻却下されました。ただ、時代の変化により、“インスタ映え”の一般化やインパクトのある食べ物を楽しむ空気感が醸成されました。加えて、弊社としても2019年に期間限定で発売した『丸ごと!!カニバーガー』を始め、見た目にインパクトのあるハンバーガーがヒットした経験もあり、今回再び社内提案したらアッサリ採用されて販売に至りました」
当時はタルタルソースだったにもかかわらず、なぜバターソースに変更され、しかも“びたびた”にしたのだろう。浅田氏は「頑張ったご褒美として“ギルティグルメ”が注目されており、せっかくなので罪悪感をガッツリ味わえるように、バターを大量に使用することに決めました」という。
また、バターソースが包み紙だけでなく紙袋まで染みていたことを伝えると、「本来は料理を提供する側として、あってはいけないことだと思いますが、そのあたりもむしろ楽しんでもらえると嬉しいです」と手が汚れてしまうことも“計算通り”のようだ。
ついに値上げに踏み切る
ドムドムハンバーガーにとって10月1日は一部商品の値上げに踏み切った日でもある。なぜ一緒のタイミングで「びたびたバターフィッシュ」を発売したのか。
「物価だけではなく人件費も上昇しており、約1年間値上げに関する会議を重ねた結果、10月に値上げすることになりました。ただ、値上げをしてもお客様の満足度を変えない、むしろこれまで以上に満足してもらおう、という思いを込め、ビジュアルからでも楽しんでもらえる『びたびたバターフィッシュ』を発売しました」
ただ、値上げは消費者の行動を抑制してしまうため、今後も注目度を維持するためには「びたびたバターフィッシュ」のようなインパクトあるハンバーガーを企画していかなければいけない。浅田氏もそのことを懸念しており、「注目してもらえるのは嬉しいです。しかし、話題になればなるほど、次の企画のハードルが上がってしまうため、私たちとしては腕の見せ所ではありますね。ですが、プレッシャーはもちろん、値上げに負けずにお客様を満足できるメニューをリリースしていきたいです」と語った。
今後、ドムドムハンバーガーがどのようなメニューを出してくれるのか楽しみにしたい。
(文=望月悠木/フリーライター)