「食品添加物=悪」の話を論じている人は、自ら実験を行わずに安全性評価の結果を否定して「毒性がある」とわめいているだけです。「毒性がある」というのは「無害な化学物質など存在しない」という言葉と同義なのです。
実際に、食品添加物の使用量が増えているにもかかわらず平均寿命は延びています。食品添加物の使用をやめたからといって、平均寿命が100歳くらいになるわけではないはずです。
食品添加物の危険を煽る記事にご注意
もし本心から食品添加物が危険だと警鐘を鳴らしたいのであれば、恐怖を煽る書籍や記事を書かずに、毒性を再検討する研究を行い、論文を書くべきです。WHOなどのエリート科学者たちを黙らせるくらいの実験結果を示した上で論文に著し、世界中の科学者の審議を仰げばいいのです。
もちろん、食品添加物の安全性に関するすべての実験結果が正しいとはいえません。また、実験の正当性や確実性については、世界中の誰も保証できません。食品添加物同士の化学反応など、100%安全と言い切ることもできません。食品添加物が食品中で予想外の反応をし、未知の猛毒物質になったり、子供をキレやすくさせるかもしれません。現在未確認の毒性があって肥満を促進するかもしれません。中には、そうした毒性が判明して、近い将来に使用不可となる食品添加物があるかもしれません。
しかし、現在は、それらを明確に裏付けるデータはありません。そのような状況で、「安全か危険かわからないから摂取しないほうがいい」などと消費者の不安を煽っているのが、昨今の“食品添加物危険ブーム”なのです。
科学や医学の分野においては、「特に人間への危険性が不明瞭な物質は、危険であると判断する」という大原則があります。この考え自体は、極めて素晴らしいと思います。ただ、ここ約20年を振り返ると、食品添加物は誰も殺さないどころか、食中毒の発生を効率的に抑え、食品の味や見た目を格段に良くしています。
また、危険性が判明したものは使用禁止になっています。使用禁止になっていなくても、多少なりとも危険性がある物質は、摂取しても問題ないほど少量しか使用していませんので、よほどの偏食家でもない限り、そのリスクが顕在化する可能性は低いといえます。
これらを踏まえた上で、「人工甘味料は肥満を促進させそうだ」と思うのであれば、避ければよいでしょう。発がん性が気になるのなら、オーガニック食品を食べてください。 しかし、それを他人に強要するのは単なる善意の押し付けでしかありません。そのような情報に振り回されないリテラシーを持ちましょう。
(文=へるどくたークラレ/サイエンスライター)