原因として、楽天の基地局はまだまだ少なく、東京23区内でも電波の届かないエリアが残っていることが考えられます。楽天の周波数は1.7GHz帯で、大手3キャリアが使うプラチナバンドよりも直進性が高く、屋内に回り込みにくい特性があります。開通作業をするのは自宅の室内が多いと思われるので、電波が弱い、あるいは圏外である可能性が高いのです。
楽天の基地局は東名阪から展開していますが、それ以外の地域ではKDDIとローミング契約を締結しており、地方ではauとほぼ同じエリアを利用できます。また東名阪でも地下鉄や大型の商業施設、主要ビル内はローミング対象であるため、たとえば走行中の地下鉄車内でもauと同じ感覚で使えます。
楽天はキャリア事業への参入にあたって、業界内から技術者を引き抜いて体制を組んでいます。膨大な数の建物や道路が複雑に入り組んだ東名阪エリアにゼロから基地局を整備したことを考えれば、現状はかなり健闘しているといってよいでしょう。
逆にいえば、技術の現場レベルでは開通にあたってある程度のトラブルが起きることは想定していたはずです。対策としては、ユーザーからの報告に基づいて基地局の数を増やしていくしかないでしょう。
楽天の無料サポータープログラムは、東名阪に住む5000名が対象です。それでも人気端末は品切れ、出荷が遅い、サポートにつながらないといった問題が起きています。本格運用では全国の数万人、数十万人を相手にしなければならず、どのくらいの体制が必要か、見積もっているところでしょう。
楽天の三木谷浩史社長はキャリア事業の展開を『ホップ・ステップ・ジャンプ』と表現していました。『ステップ』ではオンライン展開、『ジャンプ』では全国の実店舗展開を予定しているようです。しかし音声通話やSMSなどの機能にも他の大手キャリアでは起きないような問題を抱えており、しばらくの間は無料サービスを継続せざるを得ないでしょう。
5Gへの影響も懸念されます。2020年には楽天を含む4キャリアが5Gサービスを開始する予定です。楽天は最初から5Gへの移行を想定したインフラを構築することで、3Gなど古い設備に足を引っ張られる3キャリアよりも優位に立てるはずでした。しかし楽天のLTE(4G)サービスの立ち上げが遅れ、『楽天はつながらない』というイメージが付いてしまうと、5Gでも苦戦する可能性が出てきました」
楽天の参入による競争激化で、大手携帯キャリア各社の料金の値下げに拍車がかかることが期待されていたのが遠い昔のことのようだ。ユーザーが最も気になっているのは料金プランや各種サービスだ。インフラ整備で躓いていては、先が思いやられる。
(文=編集部)