日本人のテレビ視聴時間、実はネットの7倍…8割の人が「テレビつまらない」と感じるワケ
確かに、今のテレビのほうが情報量も多ければ、視聴者の理解を助けるため、わかりやすく情報を伝える仕掛けがしてあります。例えば、出演者の発言をテロップで流す、理解を高めるために補助の情報を、画面を切り替えてきめ細かく制作する、などのやり方です。
さらにいえば、生放送が増加して、朝から夕方までほとんどの情報バラエティ番組がライブで構成されていることもあります。テレビ局は何もしていないわけではなくて、それなりに視聴率を稼ごうとして必死になっているのです。
かつてはプロ野球中継のようなコンテンツに日本中が熱狂した、という時代がありました。94年10月8日の中日×巨人戦のフジテレビでは驚異の48.8%という世帯視聴率(関東)をたたき出しています。これは77年以降のプロ野球の視聴率で最高のテレビ番組でした。確かに巨人戦ナイターの中継の視聴率は下がっており、15年8月25日のヤクルト×巨人戦(フジテレビ系)などは3.7%だったとも報道されています。この20年間に劇的にプロ野球は面白くないコンテンツになってしまったのでしょうか。
ネットコンテンツが面白く感じられる理由
テレビ視聴が近年減少した理由として、テレビのコンテンツの質が低下したという主張には、明確な証拠はないと考えられます。しかし、少なくともテレビ以外のエンターテインメントとしてのメディアとの競合によって、テレビの地位が低下したと考えられるでしょう。最大の競合とはいうまでもなくネットですが、ではネットのコンテンツはテレビよりも魅力的なのでしょうか。
メディア研究者として世界的にその名前を知られたマーシャル・マクルーハンは、「テレビは究極のメディアだ」と言ったことがあります。マクルーハンの主張は、メディアは単にメッセージを伝達する仕組みであるのではなくて、メディアという形式そのものが、人々に影響を与えるという点にありました。マクルーハンが「メディアはメッセージだ」、さらに「メディアはマッサージだ」と言ったのはこうした意味です。
では、テレビはなぜ「究極のメディア」といえるのでしょうか。
テレビ視聴の最大の特徴とは、あるテレビ関係者が筆者に言った言葉を使えば、「寝ることの次に楽な活動」である点です。つまり、テレビ視聴者はチャネルを回す、あるいは録画再生ボタンを押す以外に何もしなくても楽しいコンテンツが流れてくるのです。そして受け身である視聴者は、テレビから発信されるメッセージを深く考えることなく受け止めます。