各社ともに学割を中心とした春商戦向けの販売施策を打ち出してきている。しかも今年は、各キャリアの学割施策に大きな変化が見られるのに加え、従来春商戦に力を入れていなかったMVNOが、この商戦期に向けたキャンペーン施策を打ち出し、勝負をかけようとしている。携帯電話業界に一体、何が起きているのだろうか。
大手3社の学割施策は18歳以下をいっそう優遇
携帯電話業界の最大の商戦期といえば、新入学シーズンを迎え、多くの学生が新たに携帯電話を契約する、春商戦である。それゆえ今年も、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの主要3社は、ターゲットとなる学生と親を獲得するべく、今年も学生向けの割引キャンペーン、いわゆる「学割」に力を入れてきている。
だが各社の今年の学割施策を見ると、その内容には大きな変化がみられる。確かに最近、各社の学割施策には変化が起きており、昨年各社が打ち出した学割施策は、若い世代が消費するデータ通信容量が大きくなっていることを受け、料金を割り引くのではなく、データ通信容量を増量するというものであった。
そして今年の学割も、やはり従来とは異なる大きな変化が見られる。そのひとつは、18歳以下と19歳以上とで、学割の内容を変えるケースが増えたことだ。従来の学割施策は、25歳以下であれば一定の条件を満たすことで、同じ内容の割引を受けることができた。だが今年の学割はそうではなく、18歳以下の契約者には手厚い割引施策を提供する一方、19歳以上の契約者はあまり重視しなくなってきているのだ。
特にそのことを象徴しているのが、ソフトバンクの低価格ブランド「ワイモバイル」が展開する学割施策だ。ワイモバイルでは主力の料金プラン「スマホプラン」を契約した18歳以下の利用者に対し、14カ月目から12か月間の月額基本料を1000円割り引く「ヤング割」を提供。これを、契約の翌月から13カ月目まで月額基本料を1000円割り引く「ワンキュッパ割」と組み合わせることで、2年間月額1000円の割引が受けられるようになる。
一方で、19歳以上の利用者に対してヤング割は適用されない。代わりに用意されているのが、25歳以下の人がWi-Fiルーターを新規契約する際に指定のプランを選ぶと、月額1684円の「アドバンスオプション」が37カ月間無料になる「Pocket WiFi学割」だ。こちらは新生活を始めた人が固定ブロードバンド回線の代わりにWi-Fiルーターを契約する場合にはメリットがあるものだが、スマートフォンだけを利用する人にはメリットがない。従って、いかに18歳以下が優遇されているかが理解できるだろう。
数少ない新規顧客の高校生以下に照準を絞る
そしてもうひとつの変化は、データ通信料金が利用した量に応じて変化する、段階制の料金プランを取り入れたことだ。例としてauの「学割天国U18」を挙げると、5分間の通話定額に加え、月当たりのデータ通信容量が3GBまでであれば月額2980円、5~20GBまで利用しても5090円と、その月の利用状況に応じてリーズナブルな料金で利用できる料金プランが提供されるのだ。
もっとも、これだけ安価な料金で利用するには、18歳以下のユーザーが新規契約するだけでなく、その家族もauに新規契約し、さらに固定ブロードバンドとのセット契約による割引サービス「auスマートバリュー」も適用する必要があるなど、非常にハードルが高い。だが従来、大手3社のデータ定額サービスは月当たりのデータ通信容量が一定に定められていたことから、段階制という新たな提案をしてきたことは大きな変化といえよう。