スマートフォン(スマホ)のカメラ機能は、モデルチェンジごとに高画素化されたり、連写機能を搭載するようになるなど、次々と進化してきた。しかし、そんなスマホのカメラ機能にも限界があった。それがズーム機能だ。
スマホとして実用的な薄さを保つために光学ズームレンズを搭載するのが難しいため、ソフト的な処理をするデジタルズームを使うのが一般的な状態だった。
しかし、2013年半ばにサムスンが、10倍光学ズームレンズを搭載したスマホGALAXY S4 ZOOMをリリースした。これはコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)に迫る革命ではあるが、ボディの厚みが15.4mm(GALAXY S4は約8.9mm)もあり、普通のスマホが1cmを切っている昨今では厚みを感じる。
また、パフォーマンス的にも、S4の名前は入っているもののGALAXY S4よりも低速なCPUを搭載しており、ミドル級程度といえる。ちなみに、このモデルは日本国内向けにはキャリアから正式発売されていない。
そのような状況の中でソニーは、9月6~11日にドイツ・ベルリンで開催されたIFA2013(国際コンシューマ・エレクトロニクス展)において斬新な新製品をリリースした。それがDSC-QX10とDSC-QX100の「レンズカメラ」という新しいジャンルの製品だ。これは一見、ミラーレス一眼の交換レンズのようだが、映像素子や撮影機能を搭載し、単体でカメラとして使えるものだ。
カメラ自体にはディスプレイを持っていないので、専用アプリをインストールしたスマホに映像データを転送して表示させる。撮影映像を確認しているときもリアルタイムに表示するので、普通にカメラを使っているような感覚で撮影することができる。
QX100は映像素子が高級コンデジのRX100M2と同じ大きなサイズの1.0型、光学部分が3.6倍ズームでF1.8と明るく、これもRX100M2と同じ。アウトラインとしては高級コンデジ並みの性能を持っている。そして、QX10は光学10倍ズーム搭載で、同社のコンデジ サイバーショットWX10並みの基本スペックとなっている。
このレンズカメラには、iPhone向けとAndroid向けの両方のアプリが提供されるので、たいていのスマホで問題なく使うことができる。ここで「たいていの」というのは、カメラのロック機構の関係で5インチ程度までのスマホしか装着することができないためだ。
逆にいえば、5インチ程度までのスマホであれば、どれでもこのレンズカメラが使えることになる。QX10はコンパクトなサイズなので、上着のポケットに入れて持ち歩くこともでき、スマホより高画質な写真を撮影したいときだけ、これを装着して撮影することもできる。
●レンズカメラのメリット・デメリット
このレンズカメラの利点は、スマホよりも高画質な画像が撮影できることと、光学ズームレンズが使えること。そして、デジカメと比較した場合、スマホに画像をデータ転送するのが手軽であることだ(というより、撮影時に自動的に転送される)。普通のデジカメであれば、Eye-Fiのような無線LAN機能搭載のメモリカードなどを使わなければ、スマホに画像データを送ることができない。また、横幅が小さいので、スマホに接続せずに手で持って、普通のカメラでは入れないところにも手を入れて撮影することができる。