就職活動が始まると、学生の間では「就活都市伝説」が囁かれるようになるが、その一つに「美人やイケメンに有利な“顔採用”は存在する」というものがある。顔採用の代表格として頻繁に名が挙がるのは、インターネット広告代理店のサイバーエージェントだ。同社で働く女性には、ルックスが良く、仕事を生き生きとこなす“キラキラ女子”が多いため、まことしやかに語られるのだ。しかし、当のサイバーエージェントをはじめ、多くの企業は「顔ではなく内面重視」をうたっており、顔採用を否定している。
学生の間で「顔採用は存在する」という意見が多い一方で、企業側は頑なに否定しているため、あくまで都市伝説とされているのだが、実際のところ、顔採用はあり得るのだろうか。
そこで、これまでに多くの企業の新人研修を行ってきた経験から採用担当者と話すことが多いという、株式会社ヒューマンテック代表・濱田秀彦氏に話を聞いた。
●顔採用はあるのか
「以前に比べると、顔や表情といった外見が重視される傾向にあるのは確かで、その傾向を称して顔採用というのであれば、『ある』と考えていいと思います。というのも、最近は業績が上向いてきた企業が出てきて、これまでの守りの姿勢から攻めの姿勢へと転換するために、営業や接客に新人を配置する傾向が強くなってきています。これらの職種は顔や表情からくる印象がビジネスに大きく影響しますので、新人の多くを営業や接客に従事させる予定ならば、見た目の印象の良い学生を採るのは当然です」(濱田氏)
やはり多くの学生が考えている通り、顔採用は確実に存在するとみていいだろう。では、企業が顔採用を行うメリットは何か。
「顔採用のメリットとして、新人を職場に馴染ませやすいという点が挙げられます。人は自分に似たものに好感を抱くという『類似性の法則』が働くため、先輩社員に雰囲気が似た新人は、先輩から好感をもって迎えられ、職場に馴染みやすくなります。企業は採用時に既存の職場に違和感なく馴染めることを重視しますので、イケメンや美人の多い企業であれば同じようにルックスの良い新人を集めようとするでしょう。一方で、印象ばかりを重視し、『明るく真面目な感じの良い』学生ばかりを採ると、デメリットも生じます。確かに、営業や接客では第一印象が良いほうがビジネスの上では有利ですが、社内には、それ以外にも重要な仕事は多くあります。