次に、ローソンは次のような回答であった。
「バイト敬語に関する専門のマニュアルはありませんが、接客マニュアルの『接客応対の基礎編』には、挨拶の仕方やお金の受け取り方が記されています」
またファミリーマートも、他社と同じような答えが返ってきた。
「マニュアルの中には、バイト敬語に関する項目はありませんが、数年前から店舗従業員の言葉遣いに関して、きちんと指導を行うようになりました」
大手コンビニ3社は一様に、「バイト敬語に関するマニュアルはないが、新人教育の場において、きちんとした接客用語を使うように指導している」と述べている。
筆者は、毎日一度以上はコンビニを使うのだが、バイト敬語を使う店員は多いと感じる。おそらく、コンビニ各社には本格的にバイト敬語を払拭しようとの意思はないのだろう。
敬語を学ぶ場はアルバイトや職場が約64%
さらに、ファミリーレストランチェーンを多く抱える、すかいらーくグループにも話を聞いた。
「当グループでは、『いらっしゃいませ』『お待たせ致しました』といった“接客の七大用語”をはじめとした接客用語を使う教育を徹底していますが、敬語や用語をただ単純に覚えさせるという指導は行っておりません。いざというときに、個人個人でしっかりと臨機応変に対応できるような指導に力を入れています」(すかいらーく広報担当者)
接客用語に関するマニュアルは存在しているが、敬語に関する指導は現場での判断やケーススタディに委ねているというところだ。
また、ロイヤルホストを運営するロイヤルホールディングスでは、「こちらコーヒーになります」を誤用とし、「コーヒーでございます」が正しいというように「正しい言葉遣い」を5項目挙げ、2003年から各店舗に貼り出している。
コンビニチェーンのサークルKサンクスを運営するユニーグループ・ホールディングス、牛丼チェーンのすき家などを展開するゼンショーホールディングスも、「1万円から」「メニューのほう」などの言葉遣いをしないように注意することがあるという。
このように、一部では指導されているようだが、自分が客として他店を訪れた際に耳にした敬語が刷り込まれることで、バイト敬語を使ってしまう人も多いのだろう。
前述の「国語に関する世論調査」に、「敬語をどのような機会に身につけたか」という設問がある。その回答で最も多かったのは、「職場(アルバイト先を含む)の研修など」で63.5%、「家庭でのしつけ」は54.3%、「学校の国語の授業」は42.6%という結果になっている。
このように、家庭や学校よりも働く現場で敬語を身につける機会が多いわけだが、実際の職場であるコンビニやファミレスでは正しい敬語の指導が行われていない現状が浮かび上がった。したがって、これからもバイト敬語は使われ続け、いずれ市民権を得る日が来るのかもしれない。
(文=牛嶋健/A4studio)