欧米の金融機関に付き合わされる日本
そして、04年にはバーゼルⅡが作られ、10年のバーゼルⅢはリスク資産に対して一定以上の「中核的自己資本」の保有を義務付けた。しかし、これも疑問だと小倉議員は述べる。
「07年にフランスでパリバ・ショックが起こり、08年にはアメリカでリーマン・ショックが勃発しました。いずれも、サブプライムローン問題が原因です。このような巨大金融機関を救済するには、大量の公的資金注入が必要ですが、国民の多くはそれに反対したのです」(同)
そのひとつが、アメリカのウォール街で起こった「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」運動で、アメリカ全土に飛び火している。
「問題の震源地が欧米の金融機関なのですから、まずは彼らがその体質を正すべきです。日本が付き合う必要はありません。しかし、欧米の金融機関は自分たちだけ規制強化するのは嫌なのです。日本はリーマン・ショックで実体経済は痛手を受けましたが、金融が受けた影響はそれほど多くありませんでした。だから、規制が緩くても大丈夫なのですが、それでは欧米の金融機関が不利になります。そこで、『日本も付き合え』ということになるのです」(同)
そもそも、日本のリスクについても疑問だと小倉議員は主張する。
「日本は債務残高が多いので、国債の格付けが低いのです。しかし、日本の国債は円建てで、日本政府は通貨発行権も徴税権も有しているため、デフォルトはあり得ません。また、国債の格付けを決めているのは、主としてムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード&プアーズ(S&P)といった欧米系の格付け会社で、彼らは日本の実情をきちんと評価できているのかどうか疑問です。聞くところによると、担当者が一生懸命にレポートしても、本部でばっさりと切られてしまうこともあるそうです」(同)
日本経済が不当に過小評価されてきた現実が見えてくる。
「日本はもっと積極的に出て、ルール作りに参加すべきです。国際金融の動向は日本経済、ひいては国民生活に重要な影響を与えかねません。一層、政治主導が発揮されてしかるべきだと思います」(同)
(文=安積明子/ジャーナリスト)