石山氏「写真という平面の1枚のものを見て、見える見えないという判断をすることは、非常に難しい」
小川氏「試掘で合理的に判断したとおっしゃっている。その判断が正しかったかを今、検証している。その際、写真という客観的事実について聞いている。そして穴の下から1メートルは、地層があってゴミが入っていない。それが、写真が示している事実なんですよ。国交省はこの写真を見て、(1)ごみがある、(2)ごみがない、(3)この写真を見てもゴミがあるか判断できない、この3つしかない。どれですか?」
石山氏「3つと言われると何番だというような、なかなか回答になりがたいところがあります。試掘を行った業者が、判断して報告書をつくった」
小川氏「試掘報告書なんて聞いていない。写真のことを聞いている」
筆者自身もこの野党合同ヒアリングにジャーナリストとして参加していたが、国交省を代表して出席していた石山課長の事実上の答弁拒否にはうんざりした。逆に国会議員の気の長い執拗な追及には感心した。
A工区No.1、試掘写真と深さ3メートルの意味
今回焦点となっている写真資料(【写真3】)は、17年3月から5月、国会で野党が国交省に請求していた証拠資料がなかなか出されないなかで、同年8月22日、朝日新聞が一面で大きくスクープ報道した写真と同じである。朝日新聞は独自に業者からこの写真資料を入手し、カラーで掲載したうえで『ごみの状況、判別不能 森友8.2億円値引き、根拠写真 専門家「不鮮明」/日付なしも』という見出しを打った。その記事のなかで次のように書いている。
「『学校法人森友学園』への国有地売却問題で、国が更地の鑑定価格から差し引くごみの撤去費を約8億2千万円と積算した根拠とされた現場写真21枚を、朝日新聞社は入手した。国は関係者の同意が得られないと開示を拒んでいた。土地紛争の専門家は、『この写真は不鮮明でごみの量の判断根拠にならない』と指摘しており、見積もりの正当性について国の説明責任が問われそうだ」
報道を契機に、国はこの「21枚写真資料」を国会議員に提出することになった。ただ、この時点では朝日新聞も国が提供した不鮮明な写真しか入手していなかったため、「判別不能」と指摘するほかはなかった。現在では前述のとおり、これら不鮮明な写真の元の電子データを入手し、鮮明に映るよう処理したため、深部にはごみがなかったことがわかっている。
朝日新聞は18年10月11日に『ごみの深さ「3.8メートル」ない疑い 森友国有地 値引き根拠揺らぐ』、翌12日に『値引き根拠 野党追及 森友国有地 ごみの深さ疑惑 自民党内でも「根拠崩れた」』と報じた。
「森友学園への国有地売却を巡っては、国は売却交渉時、地下3メートルより深いところで、新たなごみが見つかったことを根拠に、約8億2千万円の撤去費用が生じるとして値引きをしていた」「国有地では以前から深さ3メートルまではごみがあると確認されていた」(朝日記事より)
「3メートルまでしか確認できなければ、値引きの根拠が揺らいでしまう」(同)
確かに森友学園は15年6月に国から学園用地を借地し、校舎建設のために15年7月から11月にかけて土壌改良工事(重金属の除染と埋設ごみの撤去)を済ませていた。したがって単にゴミがあると確認しただけでなく、敷地の3mの深さまでコンクリートや石ころなどの埋設ゴミ約1000トンの撤去工事をして、校舎建設に支障のないようにしていた。しかも国が持ち主だったため、その土壌改良工事にかかった費用は国が支払う予定にし、工事終了確認も行っていた。
翌年の16年3月、校舎建設工事のための基礎杭の工事中に地下3mより深い場所からゴミが出たかどうかが問題になった。なぜなら、すでに地下3mまでの深さにあったゴミは撤去されていたからである。もし新たに見つかったとするゴミが、地下3mまでより浅い深さから掘り出したものであれば、その撤去費用を二重に支払うことになってしまう。その意味で、新たなゴミは3m以深(より深い)の深さから掘り出したものであるかが問われていた。前述のとおり今回の鮮明画像によって、ゴミの層は深さ2.7mほどまでであり、3mより深い場所にゴミの層はなかった。
崩れ去った値引きの根拠
この「21枚写真資料」の写真資料(A工区No.1)に写っている試掘穴は、国交省が3mより深いところにゴミがあると説明した唯一の試掘穴である。「21枚写真資料」には全部で8カ所の試掘穴が写り、それぞれ2~3枚角度を変えて撮影され、積み上げられた埋設ゴミなども撮られていた。このNo.1の試掘穴を除く7カ所の試掘穴は、深さが1.2m、1.6m、1.8m、3.0mであり、3mより深いと書かれたものは、今回取り上げた【写真3】だけであった。そしてNo.1ではゴミの層が1~3.8mと書かれていたが、試掘穴の実態と異なっていることが問題となっていた。
つまり、国が値下げの唯一の根拠とした写真資料の試掘穴No.1で、地下3mより深い場所にゴミの層がないことがわかった以上、国が示した試掘写真資料では、いずれも値引きの根拠は失われたといえる。
この試掘写真資料は、国が鑑定価格9億5600万円の国有地を約8億2000万円値引き1億3400万円で払い下げた値引きの根拠証拠であり、17年2月27日に財務省と国交省が国会に提出した。財務省近畿財務局が作成した試掘写真資料「17枚写真資料」には、16枚の写真に積み上げた埋設ゴミの山が写っていた。財務省は地下深部から掘り出したものであり、その総量は2万トン、数千台のトラックで運び出さなければならないと説明した。しかし、この写真資料には、地下から掘り出したとする試掘穴が1カ所しか写っておらず、しかも掘り出した深さもわからなかった。
17年3月から5月にかけて、国会でも埋設ゴミの山が地下深部から掘り出されたものかどうか疑問が出され、石井啓一国交大臣は自分が確認した証拠があると発言した。その結果、証拠資料の提出が求められたが、提出されず、そうしたなかで朝日新聞のスクープをきっかけに公表された国交省作成資料が「21枚写真資料」であり、その鮮明画像によって値引きの根拠とならないことが今回わかったのである。
すでに当サイトで複数回にわたり報告したように、近畿財務局作成の「17枚写真資料」、国交省大阪航空局作成の「21枚写真資料」ともに偽装されていたことがわかっていた。国有地払い下げにおける値引き額を算定する証拠資料に使えないと筆者らは主張してきたが、今回国が2万トンの埋設ゴミの計算に使われた唯一の写真資料でも偽装されていたことがわかった。
“忖度政治”の端緒となった森友問題によって、安倍内閣は総辞職すべきといえよう。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)