内閣府が8月17日に発表を予定している4~6月期の実質国内総生産(GDP)の行方には注意を要する。今年5月ごろまでは民間シンクタンクの間で年率2%台の高成長が期待されていたにもかかわらず、一転してマイナス成長に逆戻りする懸念が出てきたからだ。
最大の懸念材料は、長引く円安に伴う食品価格などの高騰により、消費者が財布の紐を堅く締め始めたことだろう。GDPの6割を占める個人消費が大きく落ち込み、景気の足を引っ張る恐れがある。言い換えれば、アベノミクスの大黒柱である、日本銀行の黒田東彦総裁が進めてきた異次元金融緩和の副作用が顕在化し始めるかもしれないのだ。
折からの中国バブル崩壊もあり、米国向け輸出という牽引車だけで日本経済が巡航速度を維持できるのか。経済の動向から片時も目が離せなくなってきた。
大きな異変の兆候
先月下旬に相次いで公表された経済統計の中で、大きな異変の兆候と警戒すべきなのが、総務省の「家計調査(6月分速報)」だ。2人以上の世帯の消費支出が26万8652円と、前年同月比で実質2.0%の減少となった。消費支出は、昨年春の消費増税から1年が経過して影響が一段落した一方で、同じ家計調査の勤労者世帯の実質収入が1世帯当たり73万3589円と前年同月比で実質2.8%伸びており、本来ならば順調に伸びても不思議がないはずだった。
そこで、消費不振の原因と疑われているのが、輸入物価の上昇だ。やはり総務省が発表した全国消費者物価指数(CPI、6月分)の総合指数(2010年を100とした値)が、103.8と前年同月比で0.4%上昇したからだ。中でも、原材料の輸入依存度が高い食品は、前年同月比で2.5%の上昇となっている。このため、消費者の間に節約志向が広がり、財布の紐を堅く締め始めたのではないかとみられる。
もうひとつ気掛かりなのが、米国向けを中心にGDPのけん引役の役割が期待されてきた輸出だ。財務省の貿易統計(6月分速報)によると、輸出額から輸入額を引いた差引額は690億円の赤字と単月ベースで3カ月連続の赤字になった。自動車、自動車部品などで、経済の落ち込みが懸念される中国向けの輸出が減少したことが背景にある。
日銀の異次元緩和の副作用
厄介なのは、早くから懸念されていた日銀の異次元緩和に伴う円安が、輸出増という経済にとってのプラス面より、輸入物価の上昇という副作用のほうに強く働き、消費を冷え込ませ始めたことだ。中国バブル崩壊の影響が顕在化して、日本の経済成長の足を引っ張っていることも深刻だ。このままでは4~6月のGDPにもネガティブな影響が出かねない。