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【京アニ放火】青葉容疑者と同じ「就職氷河期世代」の人々が抱く複雑な心境

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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 2人に並んでの写真を撮らせてもらった。「ピースサインなんかしなけりゃよかったかな」と笹原さん。「でも今も作品は生きている、ということを示したいんですよ」と島津さんが語った。「アニメオタク」といわれる彼らは概して外向的性格ではなく、内向的で優しい人が多そうだ。他者を蹴落として出世することなどできず、挫折もあろう。京アニの作品は、そうした人たちをつなぐ大きな役割を果たしてきたのだ。

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島津さん(左)と笹原さん

 

 滋賀県長浜町から自転車で来ていた安野貴真さん(40)は特段のアニメファンではなかったが、「よく通るところだったので驚いて来てみた」という。青葉真司容疑者(41)と年齢は変わらない就職氷河期世代だ。

「僕も就職は苦労しました。正社員にも一回なったけど挫折して、今も派遣社員です。犯行がそれで正当化されるはずもありませんが、犯人が定職がなかったことも無関係ではないのでは」(安野さん)

 青葉容疑者も埼玉県庁での仕事が外部委託され失職していた。安野さんは東京で働いていた頃、秋葉原事件の直後に現場を通り、犯人が乗っていたトラック車も見ていた。

「遭遇した友人は後ろから殴られたと言っていました。一歩間違えば自分もと思い、ぞっとしました」(安野さん)

 身近に起こった凶悪犯罪が、一挙に頭の中で交錯していた。

「苦しまなかったのなら」と父

 前後するが7月24日、兵庫県加古川市の設計士、津田伸一さん(69)を訪ねた。長女の幸恵さん(41)は京都アニメーションに約20年勤め、色彩を担当していた。大事件や事故直後に取材に応じてくれる遺族は限られる。「娘たちの仕事ぶりを知ってもらえれば」と悲しみのなかにあっても快く応じてくださる津田さんには報道陣が殺到する。筆者は電話番号がわからずいきなり訪ねた。「車がないからいないわ」と近所の人に言われ、手紙と名刺をポストへ入れてインターフォンを押すと、意外にも在宅だった。「マスコミさん、もう来んやろと思ったら……」と言いながらも屋内に招いてくださった。

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津田幸恵さん(父・伸一さん提供)

 

 火災から約1週間。犠牲者すべてが特定できた頃だ。

「覚悟はしていましたから。明日、長男運転の車で京都へ行きます。警察からは『対面しますか?』と聞かれました。『します』と言うと『できる限りのことはします』と言われました。顔も焼けているようですね」

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