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【京アニ放火】青葉容疑者と同じ「就職氷河期世代」の人々が抱く複雑な心境

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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 運命の日の昼前、姉が「幸恵ちゃんの会社が火事みたいや」と慌てて電話してきたのでテレビをつけた。会社に電話すると娘は第一工場の2階にいたとわかった。「これはあかんなと思いました」。三女が現場に向かい自らは待機した。翌日、警察からの連絡で遺体などが並ぶ警察学校へ行くと、DNA鑑定のため頬の内側を採取された。

「幸恵は小児喘息で外で遊ぶより、自宅で本を読んだりアニメ漫画の主人公の絵を描くのが好きでしたね」

 兵庫県の高校を卒業し代々木アニメーション学院の大阪校で研鑽した後、京アニへ就職した。「会社も創立20年くらいで小さく、家庭的でした」。そのうち、テレビ番組のエンドロールに幸恵さんの名が出るようになった。「妻は本当に喜んだ。会社は発展して娘も働き甲斐があったみたいで、生き生きしていました」。

 4年ほど前に幸恵さんは、猫を飼うために会社から一駅の所にマンションを移した。津田さんが最後に娘に会ったのは今年のゴールデンウィークの頃。

「いつも、京都の銘菓や寿司などを持ってきてくれる優しい子でした。その時は、昼食を食べたばかりで夜に食べましたね」

 昨年、妻の洋子さんをがんで亡くした津田さん。「私は写真嫌いで、娘の写真もほとんどないんですよ。テレビつけるとなぜか事件のニュースが終わる頃ばかり、吉本(興業のニュース)ばっかりになった。犯人が憎いとかの気持ちもまだ出てこない。自分でもわからない。でも……最悪ですわ」。

 すでに出尽くしたのか、涙を見せず飄々と話す。26日に京都府警から遺体を引き渡され、翌日通夜、28日に告別式を行った。返された遺品のバッグは焼け焦げていた。「やっと娘を連れて帰ることができた。警察から、一酸化炭素中毒ですぐ意識がなくなったはず、と説明された。苦しまなかったのなら……。それだけが救いです」と話した。
(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト)

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