7月1日、「安全保障上の輸出管理に不備がある」として、経済産業省が韓国向けの半導体材料について「包括的輸出許可」を「個別輸出許可」に切り替えたが、これを契機に日本と韓国の間で深刻な対立が発生している。
その後、日本が優遇措置の対象国であるホワイト国から韓国を除外することを決定すると、これに対抗するかたちで韓国側も日本を優遇対象国から除外する決定を行った。さらに韓国政府はこの問題を理由に、日韓で防衛秘密を共有する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄にまで踏み切った。
韓国側の一連の決定はまったく根拠のない暴挙である。日本側に理があっても「すべて日本が悪い」と無理難題を吹っかけてくる韓国側のいつもながらの行動と言えないこともないが、出るのはため息ばかりである。
韓国のトラウマ
筆者は2003年10月から2011年3月まで内閣官房に出向し、内閣情報調査室内閣参事官として経済面を中心にインテリジェンス情報の収集・分析に当たっていたが、在籍中に聞いた韓国政治の専門家からの指摘が今でも忘れられない。
「インドのように植民地時代から独立運動を行い『宗主国を自らの力で追い出した』という体験を国民全体が共有できれば、植民地時代のトラウマは癒やされる。だが第2次世界大戦中にほとんど独立運動が起きなかった韓国にはそのようなサクセスストーリーはなく、永遠に宗主国であった日本を恨み続けるのではないか」
日本製品の不買運動が激化している韓国では、光復節(韓国の独立記念日)に当たる8月15日、ソウル光化門広場に市民約10万人が集まり、「独立運動はできなかったが、不買運動はする」と叫んだが、このことは上記専門家の指摘が今でも正しいことを示す一つの証左だろう。
一連のやりとりのなかで筆者が注目したのは、日本が韓国をホワイト国から除外することを決定した8月2日、文在寅大統領が「我々は日本に勝てる。北朝鮮との経済協力が実現すれば、日本に一気に追いつくことができる」と国民に対して訴えたことである。
昨年の韓国のGDPは約1.6兆ドルと日本のGDPの3割だが、人口が日本の4割である韓国の1人当たりのGDP(昨年は世界30位)がこのまま推移すれば、5年以内に日本の1人当たりのGDP(世界21位)を上回る可能性が出てきている。北朝鮮のGDPは韓国のGDPの100分の1にすぎないが、「隠し玉」は北朝鮮の鉱物資源のようである。韓国商工会議所が2007年に公表した報告書によれば、北朝鮮の鉱物資源は総額6.4兆ドルであり、内訳は金が2000トン、鉄鉱石が5000億トンなどとなっており、レアアースも豊富であるとされている。