こうした懸念を団塊世代はどのように受け止めているだろうか。都内の不動産関連会社に勤務する48年生まれの男性に尋ねた。
「団塊世代は全共闘世代とも言われるが、このネーミングは大袈裟だ。全共闘運動にかかわっていた人たちはごく一部である。当時は大学進学率が低く、私も高校を出てすぐに就職したので全共闘運動を経験していない。シンパでもなかった。ただ、人口の多い世代なので、子供の頃から自己主張をしないと埋もれてしまうのではないかという心境にあった。同世代の多くが似たような心境だったのではないだろうか。これが原体験となって、自己主張の強い世代になったのだと思う」
この男性はこう続ける。
「今の年齢になって、改めて同世代を見ると、理屈っぽくて一言多い人間がたくさんいる。私も何かにつけてクレームを口にするタイプで、役所や銀行で腹の立つ応対をされると、ついつい担当者や責任者を理屈で追い詰めようとしてしまう。年を取ると人間が丸くなる半面、些細なことにも依怙地になりがちなので、団塊世代は確かに病院や介護施設にとっては扱いにくい世代だと思う」
この世代に対して、介護職員が対応できるかどうか。今以上に虐待などの問題が頻発しないとも限らず、「介護業界では、2025年には介護現場で史上最大のミスマッチが起きる可能性があると心配する意見も聞かれる」(業界関係者)という。
それだけではない。外国人労働者という新たなプレーヤーが、介護現場に加わるのだ。今年4月の入管法改正よって、政府は向こう5年間に上限6万人の外国人介護人材を受け入れるという数値目標を発表した。
虐待やハラスメントが横行する現場や、ミスマッチのリスクが潜在している現場に外国人労働者が大量に加わったら、どんな事態に至るのか――。前出・社会福祉法人事務長は不安を抱いている。
「外国人職員と日本人職員とのトラブル、外国人職員と利用者とのトラブルなど何が起きそうなのかは想像がつかない。せっかく制度化された特定技能が、台なしになってしまうような事態が起きないとも限らない。行政も民間も受け入れに前のめりになっているが、さまざまなリスクを想定して慎重に受け入れに取り組む必要がある」
さる4月13~14日、在留資格「特定技能」の介護技能評価試験と介護日本語評価試験がマニラ市で実施され、113人が受験して、24日に84人の合格が発表された。厄介な問題が重層的にうごめいている介護現場では、就労環境の健全化が喫緊の課題である。
(文=編集部)