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デモ過激化の香港は今、日本軍侵攻下と同レベルの騒乱状態にある…根底に貧富の差への不満

文=甘粕代三/ライター
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 香港競馬は原則として水曜、香港島中心部のハッピーバレー競馬場でナイター競馬、日曜には新界の沙田競馬場で昼競馬が開催される。この日の開鑼日のあとは4日(水)のハッピーバレー開幕を迎えるのが通常だが、今年は見送られた。HKJCはその理由を一切明らかにしていないが、ハッピーバレー競馬場が6月の103万、200万人デモのスタート地点となったヴィクトリア公園からほど近く、安全を保証できないことは競馬ファンのみならず、香港の善男善女なら誰でもわかっていた。

 その後、11日(水)はHKJCの予定通り、ハッピーバレーの開幕日を無事迎えられたが、HKJCは水面下で何とも息の詰まる交渉を進めていた。何が友人と共有する「天祿」の出走が迫っていたからだ。

「ジョッキークラブは何に出走させないよう懇願しましたが、元朗襲撃事件と一切関係がないと主張する何が受け入れるはずもない」(香港競馬記者)

 そして、16日(月)には運命の出馬表が発表され、第1レース7番にその名が掲げられた。その直後、ネット空間には「ハッピーバレー競馬場を包囲せよ」との書き込みが相次いだ。何の所有馬「天祿」が出走し、何が来場すればハッピーバレー競馬場には元朗襲撃事件の復讐を果たそうと頭に血が上った黒シャツ隊、勇武派と自称する過激分子が殺到し、血の雨が降ることは必至。HKJCは何の説得をメンバー・オーナー担当の責任者に託し、電話で必死の説得をぎりぎりまで続けたが、何の説得を果たせず、ついに苦渋の開催中止を発表せざるを得なくなった。

「ファン、騎手と職員の安全と馬の福祉が脅威を受ける可能性があるため、香港賽馬会は本日(9月18日)、今夜のハッピーバレー開催の中止を通告する。賽馬会は競馬開催に当たり、安全を第一に考え、競走馬、ファン、騎手および職員の安全に責任を果たしてきた。昨今の状況を常に深い関心を持って観察し、同時に今夜の開催に関してそのリスクを勘案し、今夜の開催を中止し人馬の安全を確保することとした」

 ジョッキークラブのスポークスマンは「苦渋の選択をせざるを得なかった。なんともしようがない。公共の安全を賽馬会は考慮しなくてはならない。競馬業界と市民の理解を求めたい」とコメントした。

日本軍侵攻と同様の衝撃?

 香港競馬は日本が日米開戦直後に香港を攻略し、陥落させた一時期を除いて、天候などの理由以外に開催を中止することはなかった。ジョッキークラブの布告、スポークスマンのコメントにある「苦渋」は、この文脈の中で初めてその含意が明瞭となる。日本軍政下でも中止されることがなかった競馬開催が「逃亡犯引渡条例」改定をめぐる混乱のなかで中止を余儀なくされたことは、HKJC135年の歴史のなかでも屈辱であろう。裏返せば、今回の騒乱が日本軍侵攻と同様の衝撃を香港に与えていると言っても過言ではなかろう。

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