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デモ過激化の香港は今、日本軍侵攻下と同レベルの騒乱状態にある…根底に貧富の差への不満

文=甘粕代三/ライター
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香港「逃亡犯条例」改正巡り混乱続く 閉鎖の香港空港が再開もデモ隊が再び占拠(写真:ロイター/アフロ)

「逃亡犯条例」改定に端を発した香港の騒乱は、ついに香港競馬に波及、香港ジョッキークラブ(HKJC)は9月18日、安全が確保できないことを理由にハッピーバレー競馬場のナイター競馬開催を中止するに至った。

 日中戦争、天候以外の理由でHKJCが競馬開催を中止したのは135年の歴史のなかで初めて。香港返還をめぐる英中交渉時、当時の中国の最高実力者、トウ小平は「舞照跳、馬照跑(ダンスホールも競馬もそのまま)」と香港市民に呼びかけ、香港市民が抱く返還後の不安を払拭したが、香港返還の“2大公約”は騒乱により破られてしまった。

 開催中止の伏線は7月21日に遡る。この日、中国への引き渡しが可能になるとされる「逃亡犯引渡条例」改定に反対するデモ参加者の一部が過激化し、立法院に突入し、議場を破壊。そのまま香港島西部にある中国政府の出先機関「中央人民政府駐香港特別行政区連絡弁公室(香港中連弁)」に押しかけ、正門に掲げられた中華人民共和国の国章に黒ペンキを投げかけた。この日まで抗議活動は警察の許可を得た合法的なものだったが、香港警察当局はこの後、抗議活動を一切許可することはなくなり、この日を境に抗議活動は非合法となった。

 中連弁への抗議活動の数時間後、九龍半島西郊の元朗駅で抗議活動から帰途につく黒いシャツを着た寸鉄も帯びぬ若者に、白いシャツを着た男性の一群が棍棒などを手に襲いかかり、負傷者49人を出し、1人は危篤となった。白シャツ軍団は元朗を根城にする黒社会、三合会と見られ、抗議活動に同情的な香港市民の多くは香港特別行政区政府、中国政府と密接な関係を持つ三合会が体制側の意を受けて若者を襲撃したと感じざるを得なかった。また、警察への通報から現場への臨場まで39分もの時間がかかったことから、三合会と体制側との結託を強く印象付けることになった。

 ここに1人の梟雄(悪の首領)が出現する。立法会議員の何君堯(57)である。弁護士の何は元朗の名望家の出身、親子二代でHKJCメンバーで競走馬も所有するオーナーである。2016年から立法議員を務め、香港特区政府寄りの建制派に属し、急進体制擁護派の1人と目されている。その何が元朗襲撃事件の直後、街頭で白シャツ隊と握手し、白シャツ隊に対して親指を突き出し「英雄!」と発し、記念撮影に応じた映像がテレビ、ネット空間に氾濫したのである。三合会とみられる白シャツ隊と急進体制擁護派の代表的人物の握手を、香港の民衆は暴力団と特別行政区政府、これを擁護する議員の結託と見て、何には膨大かつ厳しい非難が寄せられた。

「晩餐のあと友人を送った帰り道に白シャツ隊と遭遇しただけだ。握手は議員の日常活動の一環でしかない。黒社会を支持するものではない」。何はこう説明したが、民衆はこの説明で納得するはずがない。翌日から新聞や雑誌、ネット空間を何非難の声が埋め尽くした。香港評馬界代表が何のメンバー資格を取り消し、何名義の競走馬を引退させる署名を呼びかけた。その何が友人と共有する競走馬「天祿(Hong Kong Bet)」が9月18日、ハッピーバレー競馬場のナイター競馬に出走することになったからである。

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