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デモ過激化の香港は今、日本軍侵攻下と同レベルの騒乱状態にある…根底に貧富の差への不満

文=甘粕代三/ライター
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 また、14年の雨傘運動、今回の騒乱の根底には貧富の差の拡大という社会問題が横たわっている。中国からの不動産投資のために世界一までに跳ね上がった地価が物価高にも直結して、香港大学などを優秀な成績で卒業し、幸運にも地場の大企業に就職したエリートが生涯働いても、マンションの洗面所ひとつにも手が届かない。そんな香港の今が、若者たちを抗議活動に駆り立てている。

 今回の中止決定は、貴顕紳士が集うHKJCメンバー・オーナーには体制派が多く、持たざる者が多数を占める抗議活動側との社会的分裂を示す、ひとつの例といえるのかもしれない。

「今回の開催中止はやむを得ないものではあるが、その一方で大きな禍根を残したのではないか。何の所有馬はともかく、HKJCメンバー・オーナーのエリート、金満家は体制派が多く、今回の条例改定肯定派も少なくない。そうしたオーナーの口をふさぐにはSNSで『競馬場を包囲せよ!』(注:奇しくもこれは毛沢東が劉少奇、鄧小平を打倒せよと支持を出した<司令部を攻撃せよ!>に酷似している)と発信すれば、競馬開催を中止させることができ、体制派の口を塞ぐことができることを知ってしまったからだ」

 香港有力紙の論説委員は、今回の競馬開催中止の決定が抗議活動側に新たな戦術を与えてしまうのではないかと危惧する。しかし、抗議活動の過激化から勇武派に批判的な論調、民意が出始めている香港で、勇武派がこれを乱発すれば日本の競馬ファンの8倍も馬券を購入する熱い香港競馬ファンの心は抗議活動からさらに遠のき、ついには抗議活動を否定する結果さえ招来することになろう。

 抗議行動、騒乱の出口が見えないなか、過激抗議活動側に打ち出の小槌のような戦術を与えてしまった今、競馬開催が当初の予定通り実施できる保証はなくなってしまった。

 毎年12月第2日曜には、HKJC最大の行事、香港国際競走(HKIR)が行われ、1200メートルから2400メートルまで距離の異なるG1競走に世界の強豪が出走。日本からも例年10頭前後の一流馬が香港に向かう。世界中から注目されるアジア最大の競馬の祭典まで残すところ3カ月足らず。それまでに抗議活動、騒乱は幕を下ろすのだろうか?

 香港は日本のように、たかが競馬、されど競馬ではない。HKJC、香港競馬から香港社会の今、抗議活動と騒乱の今後が読み取れるのだ。これからも注視していかなければならない。

(文=甘粕代三/ライター)

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