実際に五輪ボランティア参加予定者にも感想を聞いてみた。横浜市の会社員男性(52)は次のように語る。
「インターネット上でバイト募集に関して批判が出ているのは知っていますが、わかっていないなという感じです。オリンピックに参加できるというのは何百万円お金を積んでもできない経験です。最近の若い人は会社でもプライベートでも、すぐ『いくらですか』ばかりです。嫌々働く人たちと一緒にしないでもらいたいです」
一方で、明治大学の学生(21)は、次のように眉をひそめる。
「3年前から東日本大震災で陸前高田市などにボランティアに行っています。最近、五輪ボランティアは震災時のような自発的な善意でやる仕事ではないんだなと実感しました。
うまく言えないのですが困っている人を助ける仕事ならいくらでも無償でがんばれます。でも自分にとっての経験だとか、東京五輪のレガシーだとか正直、ピンときませんでした。そこで今回のバイト募集の件です。結局、僕たちは単純にタダ働きの労働力として雇われたんだなと、悲しい気持ちになりました」
震災と五輪、双方で見え隠れするパソナ
今回アルバイトを大々的に募集しているパソナといえば、元総務大臣の竹中平蔵氏が代表取締役会長を務めており、組織委の森喜朗会長とも懇意だ。五輪のオフィシャルスタッフの業務と合わせて、東日本大震災の復興・被災地雇用事業に関しても政府から委託を受けている。来年は震災から10年の節目でもあるため、関連の復興イベントのスタッフ派遣業務などの大量受注も見込まれる。
東京電力福島第1原発事故で避難指示区域に指定された福島県浪江町の被災者男性(67)は、次のようにぼやく。
「以前から、内閣府や組織委などから復興五輪に関連した行事に関する提案が町にあったし、来年に向けていろいろ話は来ているようです。
提案を聞いている限りだと、いろいろ計画をしているのは、組織委に出向している電通さんやパソナさんの社員です。町民は、福島県内はもとより、全国に散らばっている。五輪では野球の会場になっている福島市でいろいろなイベントをやります。それらのイベントへの出席は必須ということで、我々被災者も呼ばれています。ただ大会の『壁の花』になるために住民を集めて福島市や東京まで行き、イベントに参加したり、競技を観戦したりするというのは何か違う気がします」
ちなみに、パソナが五輪オフィシャルサポーター契約をする際の契約料がいくらだったのかは今でも明らかにされていない。