今年の6月に国際連合広報センターが「世界人口推計 2019年版」を発表した。それによると、世界人口は現在の77億人から2050年には97億人と20億人も増加するという。それだけではなく、国別人口順位が次のように変わるとしている。
【2015年】
・1位:中国(13億7000万人)
・2位:インド(13億1000万人)
・3位:米国(3億2000万人)
【2050年】
・1位:インド(17億人)
・2位:中国(13億人)
・3位:ナイジェリア(3億9000万人)
なんとアフリカのナイジェリアが米国(3億8000万人/50年:4位)を抜いて世界第3位の人口大国になる。ナイジェリアは15年には人口1億8200万人で世界第7位だが、35年間で約2.2倍に急増する。
国連によると、2020年から2100年までの人口増減率で増加率上位10位はすべてアフリカ諸国となっている。
・ニジェール:581%
・タンザニア:378%
・ザンビア:344%
・コンゴ民主共和国:304%
・モザンビーク:296%
・ナイジェリア:256%
・スーダン:225%
・ウガンダ:199%
・エチオピア:156%
・ケニア:133%
アフリカ諸国の人口が今後急増することによって、世界人口は2050年に97億人に膨れ上がる。人口増加による問題の一つは、食料供給が追いつくのかという問題である。人口が急増するアフリカ諸国の農業は零細で、自給自足が主体の家族農業となっている。そこで、その家族農業を支援して市場に食料を供給できる農業経営にし、食料供給力を高めようと国連で決議されたのが、「家族農業10年」であった。
気候変動で穀物価格上昇
他方、地球温暖化問題に取り組んでいるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も食料問題にアプローチをしている。今年の8月にIPCCは、「土地の利用状況と気候変動に関する特別報告書」を公表し、気候変動と食糧供給システムとの関係を解明し、私たちの食生活のあり方にまで警告を鳴らした。
報告書では、「工業化以前の期間より、陸域面気温は世界全体の平均気温に比べて2倍近く上昇している」として、それによる極端な気候変動が食料安全保障や生態系に悪い影響を及ぼし、砂漠化や土地劣化を進行させているとし、2050年には穀物価格が最大23%上がるとした。
さらに報告書は、食料生産から流通、消費による温室効果ガス排出量が、総排出量の4割弱であることを明らかにした。温暖化の緩和を進めるために、「食品ロスおよび廃棄物を含む、生産から消費に至るまで食料システム全体にわたって対応の選択肢を導入」することを求めるとともに、「食生活の変化による総緩和ポテンシャルは2050年までに70~80億トン/年になると推定」としている。ここでいう「食生活の変化」とは、肉よりも米やトウモロコシなどの穀物を多く摂る食生活に変えることである。
このように、世界人口が急増する一方、地球温暖化によって穀物価格が上昇するなど、食料供給は楽観できない状態に追い込まれている。そして、それは私たちの肉食偏重の食生活の見直しを迫るものにもなっている。
(文=小倉正行/フリーライター)