日本でもその名が知られる韓国球界屈指の“火消し役”たちが、大ヤケドを負っている。
かつて東京ヤクルトスワローズで活躍した林昌勇(イム・チャンヨン/三星ライオンズ)と、昨季まで阪神タイガースの不動の抑えだった呉昇桓(オ・スンファン)だ。日本でもすでに報じられた通り、2人は一昨年のシーズンオフに中国マカオのカジノでバカラ賭博を行い、不法賭博容疑で韓国検察から取り調べを受け、罰金処分を科された。
「海外のカジノで遊んだだけで、起訴されて罰金を科されるのか」と驚くかもしれないが、そもそも韓国では刑法で賭博に関する厳しい処罰があり、その法律は海外(韓国領域外)でも適用される「属人主義」を採用している。海外旅行などで一時的な娯楽として嗜む程度は認められるが、常習性がある場合や過度な賭け金を投じていたことが発覚すると処罰される。ちなみに、日本の刑法は原則的に「属地主義(日本国の領域内だけで適用)」なので、米ラスベガスのカジノでギャンブルを行っても問題にはならない。
「常習」と「一時的」の線引きは曖昧だが、社会的地位がある人物は検察に目をつけられやすい。さらに、そこに組織暴力団が絡んでくると捜査のメスは一層鋭さを増す。
ソウル中央地検によると、林と呉がバカラを行ったのはカジノのジャンケットルーム(VIPルーム)で、その営業権を得ていたのは元暴力団員だった。そうとは知らず、2人は数億ウォン(1億ウォン=約1000万円)を賭けたとして昨年12月、それぞれ罰金700万ウォン(約70万円)の略式起訴処分を受けた。
林の昨季推定年俸が5億ウォン(約5000万円)、呉が3億円だったことを考えれば、2人にとって700万ウォンは痛くもかゆくもない金額だが、よりダメージが大きかったのは、1月8日に韓国野球委員会(KBO)が下した懲戒処分だろう。KBOは韓国球団が2人と契約を交わした場合、該当球団がその年に行う公式戦の50%を消化するまで、2軍を含めて試合に出場できない「シーズン50%(約72試合)出場停止」という処分を下したのだ。
軽傷で済んだ呉、選手生命危機の林
今回の処分は、呉にとってはイメージにヤケドを負った程度で済んだ。起訴に伴って阪神タイガースは再契約交渉を打ち切ったが、幸いなことに米メジャーリーグのセントルイス・カージナルスと契約に至ったからだ。「賭博」で前科が付いたという負のイメージはしばらく付きまとうだろうが、引き続きマウンドに立つことができ、メジャーで結果を残せば名誉挽回の可能性もある。