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また、裁判の傍聴に訪れた支援者達は個人が国賠に勝つ事の難しさを口々に訴えた。
自らも犯罪被害者の家族だと言う50代の女性は、「国は絶対に非を認めません。死者に法律は冷たいですから。果たして、息子さんを亡くしたお母様の被害を国が認めるのか。でも、この裁判により『痴漢冤罪という犯罪がある』『女性が虚偽の告発をして男性が被害者になる』という可能性が知れ渡った。これはとても重要な事です」
また法律に詳しい林田力さんは、この判決を「冷血判決」だと切って捨てた。
「この裁判で警察の決めつけ捜査が浮き彫りになりました。そして、それをごまかそう、なかったことにしようという工作が明らかになった。裁判所は行政に寄り添って国民の声に耳を傾けない。消費者が企業を訴える場合も同じ構図です。弱者の声に耳を傾けない裁判官が法律を扱うから、血の通わない判決になるのです」
この日、涙をたたえて愛息の遺影を抱いた尚美さんは、控訴の意志を弁護団に伝えた。
尚美さんは筆者の取材に対して裁判を続ける目的をこう答えた。
「息子がなぜ突然いなくなったのか、その理由が知りたいのです。警察は記録を改竄したりせず、真実を明らかにしてほしい」
[原田尚美さん挨拶]
警察の仕事は犯罪を捜査し犯人を逮捕するのが仕事だと思われがちだが、実はそれは警察の職務のほんの一部に過ぎない。「警察法」第一章の2条に警察官の守るべき職務としてこう書かれている。「警察は個人の生命、身体および財産の保護に任じ」暴行されて怪我だらけの信助さんを前に、痴漢容疑で取り調べした新宿署はこの法令を忘れていたのだろうか?
たとえ、尚美さんがこの裁判に勝っても、尚美さんの悲しみが癒えることはない。息子の死後の冤罪に涙する母親に、国はどう答えるのか。裁判の舞台は高裁に移る。
(文=上田眞実/ジャーナリスト)
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