火災後、これまで管理組合で説明会を含む臨時会合が2回、全体説明会と定期総会が各1回開かれましたが、ここまで時間がかかった原因は以下の3点です。
(1)保険金の支払額と工事金額のかい離
(2)工事会社の選定
(3)火元住宅の室内の残骸撤去
(1)は被害の範囲の算定がポイントでした。B社の見積もりと所有者の修繕したい部分のかい離と言い換えもできます。この点は、多くの同様のマンション火災で発生する問題だと思われます。結局、保険会社との交渉で少し範囲を広げてもらいつつ、工事個所と工事費用の削減をして決着しましたが、この交渉に相当の時間を費やしています。
(2)は意外かもしれませんが、引き受けてくれる業者が限られました。筆者の住むマンションは数年前に大規模修繕を行ったのですが、その工事会社にしか引き受けてもらえなかったのです。大規模修繕を行ったあとは、その工事会社が工事完了後の保証をするのですが、その保証があるために他社は途中から引き受けたくないというのが実態のようです。
所有者の心理としては、工事引受業者が限られてしまうと工事が独占的になり、工事費が高くつくのではないかという疑念が浮かびます。そのために第三者に見積もりを取りたいという心理が働くのですが、そもそも見積もりすら引き受け業者が見つからないという実態にはなんとも言えない思いでした。結果的に、施工業者以外からは見積もりすら取れなかったのですが、この対応にも多くの時間を要しました。
(3)引き受け業者はたくさんあるだろうと思われる、火元の部屋の残骸撤去も4社以上に断られたようです。共用部分の修繕工事の工程では重要で、撤去時にまた共用部分を汚すおそれがあるため、先に撤去してもらわなければなりませんが、その業者が見つからなかったのです。
以上の3点を原因として、火災発生から7カ月たった今でも修繕工事は始まっていないという実態があります。
しかもこの3点は、マンション管理会社の経験値の違いはあるにしても、どのマンションでも起こり得る問題点だと思われます。
火災は毎日どこかで発生しており、そのなかにはマンション火災もかなりの数があるはずですが、こうした「火災発生後の実態」は知らされることがありません。
当然、その時の管理組合の理事長や理事といった役員の方は、普段の管理組合業務に加えて火災の対応に迫られます。今回の記事が、多少なりともそういった方々の参考になることを望みます。
(文=秋津智幸/不動産コンサルタント)