・農薬の最大残留基準値
日本は、歴史的に、日本に出荷される作物について、より新しく安全な作物保護製品の使用を妨げる農薬の最大残留基準値の認可に係る厄介な申請要件を維持している。また、米国は、日本の手続きが、ある産品に関して、単独の輸出業者による農薬の最大残留基準値違反が一度あった場合に、業界全体に対して強化された監視を今なお要求していることを引き続き懸念している。
TPP、日本の食の安全に対して脅威
以上のように米国政府は日本に対し、米国産牛肉に対するBSE規制の全面撤廃、米国並みの食品添加物の早期の承認、ポストハーベスト農薬の食品添加物表示の撤廃、残留農薬違反に対する措置の緩和などの要求を行っている。
現在、日本では48カ月齢以上の牛については、もれなくBSE検査を実施している。当然、米国産牛肉についても同様である。これに対して米国政府は、その全面検査撤廃を求めているのである。非定型BSEの発生の危険性があるなかで、日本国民の健康にとって極めて危険な要求である。
また、香料を除く食品添加物数が、日本は667品目であるのに対して、米国は1612品目もあることにも問題の所在がある。米国で認められていて日本で承認されていない食品添加物が含まれている輸入食品は、食品衛生法違反として日本への輸入が認められない。そこで米国政府は、米国で認められている食品添加物をすべて日本で承認することを要求しているのである。
ポストハーベスト農薬の食品添加物表示の撤廃については、米国産レモン、オレンジ、グレープフルーツなどに使われているOPP、TBZが対象となる。これらの化学物質は、米国ではポストハーベスト農薬として使われており、輸出に際して防かびや防腐の目的で直接レモンなどに散布される。場合によっては、薬剤の入ったプールに漬けられる。
これらの薬剤は日本では食品添加物扱いされており当然、表示義務がある。日本では米国産レモンを見れば食品添加物の欄にOPPやTBZの表示を確認することができる。しかし、日本産レモンにはこれらの薬剤は使われておらず、その差は一目瞭然である。そのため、この表示をなくしたいというのが米国政府の願望である。
米国政府がTPPの食品安全に関する条項を通じて日本に対する対日圧力を強めてくることは明らかである。それだけにTPPが日本の食の安全に対して脅威となることはいうまでもない。
(文=小倉正行/フリーライター)