北朝鮮・金正恩が重篤?CNN報道は壮大なデマの可能性大…健在を示すこれだけの証拠
北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長が心臓手術を受け、重篤な状態に陥っているとの情報が20日、米CNNによって伝えられたが、北朝鮮内部では重大な異変が起こっているなどの「特異な動きはまったくない」(韓国大統領府)ようだ。逆に、金氏は健在であることを示す動きのほうが多い。それらの動きを挙げてみよう。
金氏の重篤情報から2日後の22日、金氏はシリアのバッシャール・アサド大統領が金日成主席の生誕記念日である「太陽節」(4月15日)に際して祝電を寄せたことを受け、お礼の電報を送った。金氏の名前で電報を送る以上、金氏自身が指示しなければならないわけで、本人の意識がハッキリしない段階でメッセージが発信される可能性は低いのは自明の理だ。
CNNは金氏の重篤説の根拠の一つとして、金氏が15日の金日成主席の誕生日(108回)行事に出席せず、それ以降も姿を現していないことを挙げている。だが、朝鮮中央通信の報道によれば、金氏は15日以降もジンバブエ、キューバの首脳にメッセージを送っており、重篤で判断能力がないような状態であるとは考えにくい。
このほかにも、間接的ながらも金氏の健在を裏付ける情報がある。韓国の大統領府以外にも、トランプ米大統領は21日の記者会見で、金氏の重篤情報について「(容体などは)知らないし、誰も確認していない」と述べ、米政府は把握していないとの認識を示している。トランプ大統領は金氏と実質的に3回も首脳会談を行っており、米政府は金氏の動向については情報を収集しているはずだ。トランプ大統領が金氏の緊急時に当たって、なんの情報も知らさられていないのはありえないのではないか。
これを裏付けるように、米軍制服組ナンバー2のハイテン統合参謀本部副議長も22日、「報道を確認もしくは否定する情報は何もない」とした上で「金委員長は核および軍を完全に掌握していると考えられる」と述べ、重篤説を実質的に否定している。
中国・習主席、重篤報道の2日後に地方視察
金氏に異変があれば、真っ先にその情報をキャッチするのは、隣国の中国であろう。特に、習近平国家主席は金氏との中朝首脳会談を5回も行っている。金氏にとって、最も重要な指導者は習氏であることは論を待たない。逆の立場で言えば、習氏にとっても金氏は極めて重要な隣国の指導者である。隣国で異変が起これば、国境を接する中国にも大きな影響を及ぼすからだ。
このため、中国側は中国人民解放軍を含めて、朝鮮半島情勢は細大漏らさずチェックしているはずだ。とくに、金氏の健康問題はなおさらだ。ところが、金氏の重篤情報が伝えられた2日後の22日、習氏は北朝鮮から1000キロ以上離れた中国内陸部の古都、陝西省西安市を視察していたのだ。習氏は同市で自動車会社や大学、市内の繁華街などを視察し、新型コロナウイルスの感染拡大でストップしていた経済の復興を訴えていたのである。
もし、金氏が重篤で、金氏の身にもしものことがあれば、北朝鮮の国内情勢が混乱することがわかっているのに、内陸部の西安市を視察しているであろうか。金氏が瀕死の状態ならば、視察を中止して、中国の最高指導者として首都・北京で待機し、混乱に備えているのが常識だ。
つまり、これまでに挙げたいくつかの事実から、金氏は重篤な状態ではなく、健在であるということが限りなく真実に近いといえるのではあるまいか。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)