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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

世界各国、サミットで協調して中国排除を決定…中国による他国の特許侵害や雇用喪失を撲滅

文=渡邉哲也/経済評論家

 2008年のリーマン・ショック以降、世界中で巨大化した金融機関の存在が問題視されている。大きすぎて潰すことができないため、最終的に国が救済せざるを得なくなるからだ。今後は、金融規制を含めた新たな対応やリスク管理を行うことで、そういった金融機関をなくしていくというのが世界の合意である。

「(3)税と透明性」には「BEPSパッケージの着実な、一貫性のある足並みのそろった実施は極めて重要」とある。BEPSとは「税源浸食と利益移転」のことだ。つまり、これはいわゆるパナマ文書によって表面化した課税逃れへの対処を、国際社会全体で一層早めていくという意味である。

 現在、タックス・ヘイヴンと呼ばれる租税回避地を使って課税逃れをしている企業や個人の存在が明らかになりつつあるが、その対抗策も構築されつつある。詳しくは拙著『パナマ文書』(徳間書店)に譲るが、国際的なプラットフォームとして、17年からは国家間での自動情報交換システムが稼働することになっており、今後は課税逃れに対する規制が本格化するものと思われる。

 テロ組織や暴力団などの反社会的勢力は、強化された金融規制のなかで実名での金融取引が禁じられ、オフショア(外国人や外国企業向けの非居住者向けサービス)での非実名取引や匿名口座に逃げ込んでいた。

 タックスヘイブン、なかでも匿名口座の設立が認められているイギリス領バージン諸島などを使って、「黒からグレー、グレーから白に」というかたちで、国際的な規制の網をかいくぐるかのように資金のやり取りが行われている。

 実際、13年には北朝鮮系企業の口座がバージン諸島にあるということが判明し、金融規制の対象となっているが、今後はこのようなニュースが相次ぐだろう。

「(4)貿易」には、「過剰生産能力が経済、貿易及び労働者に与える負の影響を認識」と、再び「過剰生産能力」という言葉が出てくる。

 新興国で過剰生産が行われ、ダンピングによって不当に安い製品が先進国に入ってくる。それは先進国の雇用喪失につながるため、過剰生産によるダンピングを許している限り、先進国の失業率は悪化し、景気がよくなることはない。

 そのため、輸入側が手を組んで、ダンピング製品が自国に入ってこないようする。つまり、入り口で止めてしまうわけだ。前述の反ダンピング関税によって高い税率をかけたり、パテント問題などによって実質的に輸入できないようにする。この合意についても、名指しこそしていないが、完全に中国をターゲットにしたものであろう。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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