そして、5月26日には県議会が在沖米海兵隊の撤退を求める決議を全会一致で可決。さらに、地元紙「琉球新報」が6月3日付朝刊一面で、沖縄からの全基地撤去を求める県民が42.9%に上ったとする世論調査の結果を掲載した。この世論調査は、電話帳から無作為で抽出した5775世帯のうち501人からしか回答を得られていないため、ややデータとして問題があるようにも思えるが、沖縄での反基地運動が普天間飛行場の辺野古への移設に反対するものから、県内にある基地すべての撤去を求めるまでになり、フェイズがこれまでとはまったく違うものになっていることは明らかだ。
先の県民大会でも、参加者が一斉に掲げた黄色いプラカードに書かれていたのは「米海兵隊は撤退を」との文字。県民の怒りの激しさを感じずにいられない。
県民の反基地感情の高まり
県民大会をめぐっては、実行委員会の中心となった革新各党や労働団体などは、超党派での開催を目指したが、参院選を前に基地問題がこれまで以上に政治問題化するのを避けたい自民党や公明党、さらにはおおさか維新などが反発して不参加となった。
主催者発表では6万5000人が参加したとするが、県警では実際には3万人程度少なかったとみている。実際に会場で取材した筆者も、6万5000人にはとても届いていないだろうとの印象を持った。
こうした情報をすでに得ている首相官邸幹部は、こう強弁する。
「思ったよりも参加人数も少なく、インパクトもなかったのではないか。2012年にオスプレイの配備に反対して宜野湾市で開かれた抗議集会は10万人あまりと主催者が発表したが、今回はその数字におよばない。参院選前に露骨に政治問題化しようとして自公の反発を買ったかたちで、革新各党側の戦術ミスに助けられた」
一方で、地元紙の記者の見方は違う。
「気温が32度を超える猛暑となったこともあり、参加人数がやや少なくなったのかもしれませんが、動員力の強い自民党支持の業界団体の力がなくともこれだけの人数が集まったというのは、県民の反基地感情の高まりの証左です。参院選に向けて大きな弾みとなったのは間違いないでしょう」
参院選の沖縄県選挙区には、現職の大臣である自民党の島尻安伊子氏(51)が立候補するが、元宜野湾市長で野党の統一候補である伊波洋一氏(64)を相手に、早くも苦戦が伝えられている。政府はあくまでも辺野古移設を推進するとの立場を堅持するが、参院選後にもその見直しを迫られる時期がくるのかもしれない。
(取材・文=大清水友明)