霜見は2011年4月21日に、和歌山の投資家から、ドバイの株投資をめぐり3000万円の返還を求められていたのだが、この訴状によると「霜見容疑者は、Y(すでに故人)のマネーロンダリングに加担していた」という。Yは政治家から暴力団、仕手筋など裏社会などにも通じた大物金融屋。大阪にある建設会社の株価操作事件の当事者の一人だ。
また、裁判資料として提出されたYのメモには、霜見をはじめ、容疑者となっている渡辺の経営する日鯨商事や、総裁選にも立候補した大物政治家Mの息子などの名前が記されてたという。
●株価操作、詐欺に手を染めていた?
霜見とは、いったい何者だったのか?
宮崎県高千穂町出身で、熊本商科大学の経済学部を卒業後、1984年に新日本証券(現みずほ証券)に入社。北九州支店で実績をあげ、国際部に配属。その後、ロンドン支店やシンガポール支店に配属される。
1996年には会社を辞め、会社の先輩と、スイスの投資顧問会社の東京支店、メガン・サービス(本社・チューリッヒ)という会社を設立した。しかし、その先輩と経営方針をめぐり対立、退社した。
「その後、篠崎屋の株価操作に力を入れていたようです。1万5000円の株価を3万円まで上げるからと、日鯨社長の渡辺容疑者をはめ込もうとしましたが、結局失敗したようです」(金融業界関係者)
霜見は06年、スイスとオーストリアに囲まれる、脱税やマネーロンダリングの温床といわれるリヒテンシュタイン公国にあるファンドの東京支店として「ジャパン・オポチュニティ・ファンド(JOF)」を立ち上げた。
「ここでも、アンティコルムやセブンシーズ、アーティストハウスの仕手戦などにも関わったようです。ただ、このファンドを立ち上げたのは、宝飾品やWEBビジネスなどを手掛けるジャスダック店頭公開のクロニクルの新株予約権を引き受けるための、ダミー会社の意味合いが強かったようです」(前出の業界関係者)
さらにクロニクルの関係者はいう。
「霜見さんは、2007年にビジネスアルファを買収したときにある人物から紹介され、その後、筆頭株主になってもらっていました。そんな関係で、金融面での相談などもさせてもらいました」(同社広報担当者)
証券業界関係者は、「ある人物とは、クロニクル元役員のSではないか」と指摘する。Sは、九州の銀行の不正融資事件の当事者の一人でもある。現在は海外にいるといわている。
「クロニクルの会計処理に問題が発覚したのですが、実は霜見を使って海外のSに資金を還流しているといった疑惑も出て、第三者委員会が設置されたのではないかといわれています。Sはステラ・グループの買収に動いたことがあったのですが、そのときYと親しい大物仕手筋に依頼したそうです」(別の金融業界関係者)
実はYのメモにも霜見の欄に「ステラ? クロニクル?」と記されており、3者を結ぶ点と線のようなものが垣間見えてくる。
一方で霜見はYとともに「価値のない土地を騙して売りつける『原野商法』を用いた不動産投資や株式投資を行う」ことになるのである(前出の、ドバイ投資裁判の訴状より)。
このほかにも霜見は、いくつかの仕手戦でも多方面との利害対立などがあるといわれ、大物相場師は「畑の真ん中に目立つように埋めるというやり口は、なんらかの事件の見せしめでやられたのではないか?」と推測する。
いったい霜見は最後に何をやろうとし、そしてそこに何があったのか? 真相は闇の中だ。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)