その闘争の主体となるのが、習主席の支持母体である太子党(幹部子弟グループ)と、対立する中国共産主義青年団(共青団)閥だ。そして共青団の典型として挙げられるのが、「ポスト習近平」として次期最高指導者候補の筆頭に挙げられている胡春華・党中央政治局員がトップを務める広東省だ。同省では、このところ共青団閥の幹部が次々と失脚するという異変が起きている。
同省共青団党委書記を務めた徐萍華・同省党委秘書長が4月上旬、突如として解任された。理由は腐敗問題とされる。その後も、やはり同書記を務めた同省幹部2人が更迭されており、「共青団閥出身幹部への明らかな狙い撃ち」(同)との見方が強い。
実は昨年末、共青団出身のホープと目された萬慶良・前広州市党委書記が1億1000万元(約19億円)もの贈賄の罪で起訴されており、同省の共青団出身幹部4人が失脚の憂き目を見ている。今年の全人代期間中には、共青団トップを務めた李源潮・国家副主席の腹心の党中央委員がやはり腐敗問題で逮捕されるなど、共青団閥が大きな打撃をこうむっている。
狙いは独裁体制強化か
これに追い打ちをかけるように、共青団直属の高等教育機関である中国青年政治学院が、今年の学生募集を急遽中止に追い込まれた。これは1985年の学院再開以来初めて。報道によると、この措置は共青団の関係機関の人員の大幅削減を目的としたもので、党中央政治局常務委員会で決定されていることから、習主席の意向が強く反映されているのは間違いない。このまま同学院の廃校につながる可能性も出ている。
それどころか、「共青団の存続そのものも危ぶまれる異常事態」と香港紙「リンゴ日報」は伝えている。これを裏付けるように、昨年10~12月に共青団の調査を実施した巡視チームは今年2月、「党の指導が弱まり、貴族化、娯楽化の問題が存在する」と指摘。
これを受けて、中国共産党中央弁公庁は、党の青年組織である共産主義青年団(共青団)の改革計画をまとめており、「共青団改革では、党の指導を堅持しなければならない」と強調。加入制限を緩和し、幅広い層の意見をくみ上げる組織への転換を求めている。
習主席は、共青団の現状に強い不満を持っているとみられており、最近の党会議でも「共青団は大衆から遊離した存在」と批判。胡錦濤前主席の元側近で共青団閥の中心的人物、令計画・前党中央統一戦線工作部長が収賄などの罪で無期懲役を言い渡されたほか、前述したように、共青団出身の地方幹部の失脚も続いている。