企業受けが良くない法科大学院修了生
さらに、昨今は法科大学院を経由した合格者の評判が芳しくない。弁護士事務所や弁護士法人、一般企業の人事担当者などで、司法試験合格者を採用する場合に法科大学院修了生ではなく、予備試験通過者を好む傾向が顕著になっているのだ。
ある上場企業の採用担当者は、「毎年合格率が4%未満という超難関試験となっている予備試験を通過した人が優秀であることは疑いようもないが、それ以上に法科大学院修了生は年齢の割に一般常識に欠ける人が多いという傾向がある」と語る。
大学1~2年次には一般教養を多少なりとも履修していても、それ以降は法律以外のことをほとんど学んでいない人が多く、どうしても社会一般の常識を身につける機会が少ないことが原因だろう。
それに比べて予備試験は、大学や法科大学院在学中に合格する優秀な人材や、社会人として仕事をしながら勉強するなど社会経験を持っている人材が多くいる。また、予備試験は短答式試験、論文試験、口述試験とすべてに合格しなければならないが、最初の短答式試験で法律基本科目と一般教養科目が問われる。この短答式も合格率20%と困難な内容であり、そこを通過してきた人は相応の一般教養を備えていることが担保されるといえる。
ちなみに、一般教養科目とは英語、人文科学、自然科学、社会科学で、幅広い知識が試される。
文部科学省の調査によると、今年の法科大学院の入試志願者は初めて1万人を割り込んだ。定員割れも続出し、なかには定員充足率20%以下や、ひどいところになると、そもそも志願者数が定員にも満たない大学もある。
急激に弁護士人口を増やしたことで弁護士の就職難を引き起こし、人材レベルの低下も問題となった。仕事の絶対量が増えたわけではないため、価格競争が起こり、収入が激減して貧困状態の弁護士も続出している。その挙句、法曹界を目指す人自体が減るという負の連鎖を生み出した。
新司法試験が始まって10年。法科大学院の制度も含め、司法制度全体をあらためて見直したほうがいいのではないだろうか。
(文=平沼健/ジャーナリスト)