16年半ばには50ドル台まで原油価格が持ち直す場面もあったが、それでも産油国の置かれた状況は厳しい。産油国のリーダー格とみられてきたサウジは、公務員賞与の取りやめや閣僚の減給を決定し、歳出の削減を優先している。ロシアは1バレル=45~50ドル程度を念頭に財政を運営している。原油価格が上昇すれば、産油国の経済に余裕がでることはいうまでもない。
原油価格の上昇に働きかけるためには、需給の調整が必要だ。産油国が減産を進めれば原油価格は持ち直す可能性がある。しかし、産油国の利害は簡単にはまとまってこなかった。財政破たん寸前の状況にあるベネズエラが減産を求める一方、イランやリビアは増産を主張してきた。
その状況のなかで、サウジを中心にOPEC加盟国が減産に合意したとしても、イランなどが生産回復を優先して抜け駆けを図る可能性がある。他の産油国も合意を反故にして増産を優先するかもしれない。そうなると、減産への合意は不利だ。こうしてOPEC加盟国は生産量を据え置いてきた。
加えて、米国では想定よりも早くシェールオイルの生産が回復している。原油の需給バランスは不安定であり、今後の世界経済の動向次第では再度、原油価格が下落する恐れもある。こうして、OPECは11月の総会で減産への合意をまとめる道筋をつくる必要に迫られたといえる。
有力産油国サウジアラビアの態度軟化
では、今回の決定はどう評価すべきだろう。一応の減産目標のレンジは提示されたが、14のOPEC加盟国の利害はまとまっていないとみるべきだ。なぜなら、増産を重視するイランなどに対して、例外措置が認められる可能性があるからだ。臨時総会後、イランのザンギャネ石油相は増産凍結の必要はないだろうと述べている。
つまり、今回の決定は妥協の産物と考えるべきだ。これまでサウジは、イランが増産を凍結するなら減産に応じると、強硬な態度を続けてきた。それに比べると、今回の決定はサウジが態度を軟化させ、譲歩したことを示唆する。
なぜサウジが態度を軟化させたのか。おそらく、少しでも原油価格に上昇圧力をかけ、経済を支えたいのだろう。同国は石油に依存した経済体質を改めるために、「ビジョン2030」と銘打った経済改革を進めている。これは非石油収入の引き上げや財政再建による格付けの向上等が含まれている。