安倍晋三首相は28日、辞任する意向を固めた。従前から永田町界隈で指摘されていた健康不安説を裏付けた形だ。午後2時から行われていた自民党の幹部会議に出席していた世耕弘成参議院幹事長は記者団の囲み取材に対し、以下のように語った。
「(安倍首相は)総理大臣の後任が決まるまでは、公務を続けるということです。突然、職務が遂行できなくなってはならないので、辞任を表明するということです。辞任の意向を決めた時期? 今日、役員会で伝えられた通りです。まず突然の辞任ではない。しっかり、コロナ対応をまとめた上で、迷惑をかけるといけないということです」
そのうえで、事前に総理から電話連絡はあったのかという問いに対して、世耕氏は「私のところにも簡単にありましたよ」と答えた。
安倍首相は同日午前10時前に総理大臣官邸に入り、午前10時ごろから始まった閣議に出席。その後、麻生太郎副総理兼財務大臣ら財務省幹部と新型コロナウイルス感染症対策に関係する予備費の活用などについて意見を交わしたあと、麻生氏と2人だけで会談。この際には辞任の意向は固まっていたと見られる。
午後1時から行われた新型コロナ対策本部の会議では、今後の方針を決定した上で、感染拡大防止と社会経済活動などの両立を図るため、引き続き全力で対策にあたるよう指示した。その後、午後2時から自民党本部で幹部会議に出席していた。
世耕氏は「突然の辞任ではない」という主張をしているが本当にそうなのか。自民党衆議院議員は次のように話す。
「細田派と麻生派には、ある程度の確定情報が来ていたのではないですか。『今日辞任』の情報を持っている派閥と、そうでない派閥では今後の総裁選に向けて、士気に大きな差がでますからね。そういうのを見越した上で、ここ2週間、総理辞任の情報を流したり、一方で健在説を流したりしていたのではないでしょうか。
健康不安は官邸関係者もしばしば口にするほどの公然の事実でした。長くても9月の党役員人事までには辞任されるのではないか、というのが党内の共通認識だったわけで、そういう意味では、世耕さんのいうように突然の辞任ではないのでしょう。しかし、戦略的な奇襲ではありませんでしたが、戦術的な奇襲ではあったと思います。党内に衝撃は走っていますからね。
また、コロナウイルス感染症対策の指針だけ決めて、その成り行きと成果に関する責任は後任の総理に丸投げというのは、どなたが次をやるにしても気持ちの良いものではないと思いますよ」
今回の辞任は、決してソフトランディングといえるような辞任にはならなさそうだ。