トランプ大統領、ついに科学を否定…環境データ発表前に全検閲、太陽系の全惑星を有人探査
1月に新米大統領に就任したトランプの暴走は、米国の科学界をも震撼させている。就任演説で「今世紀末までに太陽系のすべての惑星を有人探査する」と壮大な夢を語ったかと思えば、気候変動に関わりの深い環境保護局、内務省、保健福祉省、農務省に対して、メディアを含む一般向けの情報提供を一時的に停止するように箝口令を出し、環境保護局から発表される科学的な成果やデータについて、政府の職員が事前にチェックするという方針が出されたと報じられている。これに反発する科学者を中心としたデモも計画されている。
科学ジャーナリストで一般財団法人日本宇宙フォーラム主任研究員の寺門和夫氏に、トランプの言動を解説してもらった。
「トランプが所属する共和党というのは、石油産業に近いということもあり、二酸化炭素(CO2)が原因で地球温暖化が起こる、という説については否定的な人が多いです。トランプの発言は今まで共和党の人たちが言ってきたことで、それ自体は目新しいことではありません」
トランプ政権で国務長官への就任が決まったレックス・ティラーソンは、石油大手エクソンモービルの前会長である。では、 CO2と地球温暖化の関連は、科学的に見てどうなのだろうか。
「CO2が増えれば温室効果が増えるというのは物理法則で、どんな物理学の教科書にも出ていることです。実際に大気中のCO2が増えており、温室効果は必ず起こります。増えた熱を海が全部吸収してくれれば温暖化にはならないが、そうはいかない。CO2が増えるのと同時に世界の平均気温も上がっています。これが『無関係』とはいいづらい。2015年は気象観測が始まって以来、世界規模でみれば最も暑い年でしたが、16年はさらにその記録を塗り替えてしまいました」(寺門氏、以下同)
「太陽系の果てまで有人探査」の思惑
さらにこの地球温暖化の問題と、トランプが掲げた太陽系の果てまで有人探査するという夢は、関連しているという。
「NASA(米航空宇宙局)ゴダード宇宙研究所のジェームズ・ハンセン博士が1988年の米議会上院で行った証言が、地球温暖化問題のきっかけになりました。『あいつのせいでこうなった』ということで、地球温暖化に関して『NASAはけしからん』と思っている人もいないわけではない。NASAの地球観測の年間予算は、JAXA全体の年間予算くらいの規模です。トランプは『地球観測はやめて、その予算を太陽系の果てまで行くことに使え』と発破をかけているわけです」