異常な相思相愛の安倍総理とトランプ…完全秘密のゴルフ会談の裏側、難問題は一切無視
トランプ氏のウハウハ
思い起こせば、安倍総理の祖父にあたる岸信介総理がアイゼンハワー大統領とゴルフに興じたことがあった。当時は戦後の復興にアメリカの支援を確実にする意味合いを込めたプレーであった。今回は日本がアメリカのインフラ整備に協力する立場にある。そこで安倍総理はトランプ大統領に日本の新幹線技術を導入すれば、「ホワイトハウスのあるワシントンとトランプタワーのあるニューヨークが1時間でつながる」と、熱心にアピールした。この分野に関して、日本は4500億ドルの新たな対米投資を検討していることも水面下で伝えられた。
互いに相性が合ったようで、両首脳とも「日米関係をこれまで以上に発展させる」と蜜月ぶりを世界に訴えたものだ。とはいえ、不可思議だったのは、その間、メディアの取材を一切遮断したことだ。過去、アメリカの大統領が外国の賓客とゴルフを楽しむことはよくあったこと。
オバマ前大統領もゴルフ好きでよく知られていた。プレー中は別にして、プレーの前後は同行記者団にもオープンされ、記者からの質問にも応じることが慣習になっていた。しかし今回、同行記者団はクラブの地下の会議室にカンヅメにされ、すべての窓には覆いがかぶされていた。外の様子が一切見えないように細工が施してあったという。記者からはブーイングが上がったが、なす術はなし。しかも、食べ物も提供されないままだった。
もちろん、「冬のホワイトハウス」と異名をとる別荘に泊まれたのは安倍総理夫妻のみで、その他は少し離れたマリオットホテル泊。「本日、記者会見はもうありません」とアナウンスがあったため、記者団はマリオットに移動し、ようやく食事にありついた。
ところが突然、緊急記者会見の通告が。北朝鮮によるミサイル発射を受けてのこと。記者団が駆けつけると安倍総理の「断固容認できない」との発言。続いて、トランプ大統領による「100%日本を支持する」とのコメント。合わせてわずか3分ほど。記者からの質問には一切応じないまま、両首脳は別荘に引っ込んでしまった。
実は、別荘では個人の結婚披露宴が開催中で、賑やかな音楽が流れていた。北朝鮮のミサイル発射への対応より、自分の別荘での結婚披露宴というビジネスを優先するトランプ氏ならではの「冬のホワイトハウス」利用法であった。安倍総理夫妻の宿泊費とゴルフのプレー代はトランプ氏の個人持ち。「公費は一切使っていない」とのアピールだが、会員制別荘の入会金はすでに倍に値上がり。利用料金もうなぎ上りでトランプ氏はウハウハだ。
昭恵夫人のカン
それやこれやで、アメリカのメディアは今回の日米首脳会談には冷めた反応しか見せていない。それどころか、週末には民主党のサンダース上院議員の発言が大きな波紋を呼んでいた。曰く「トランプ大統領は病的なウソつきだ」。「アメリカ国民の恐怖心をあおる戦略で選挙を勝った」との見方もあるトランプ氏だが、若者の間ではヒラリー・クリントン候補より人気の高かったサンダース氏から飛び出た発言で、安倍・トランプ会談中もアメリカは大騒ぎだった。
というのも、安倍総理の訪米中もトランプ大統領が得意のツイートで「テロのおそれを封じるために移民や難民の入国禁止は必要だ」「一部の地方裁判所によるイスラム教国からの入国禁止令の撤回判断は間違っている」「先の大統領選挙では500万人の不正投票があった」という相変わらずの過激発言を繰り返していたからだ。こうした異常とも思われる発言について、懸念が共和党の議員の間でも広がりつつあるようだ。
安倍総理はトランプ氏に大いに気に入られたようだが、トランプ氏の実像をどこまで把握できたのであろうか。また、同行した昭恵夫人はファーストレディのメラニアさんからは袖にされたようで、不満げであった。これまでワシントンを訪問するたびに、オバマ大統領のミシェル夫人やブッシュ大統領のローラ夫人と共に「レディーズ・プログラム」を楽しんできた昭恵夫人。
今回、ワシントンではそうした交流はなく、終始、駐米大使の佐々江夫人が同行役を買って出ていた。ホワイトハウスの発表では「昭恵夫人は自前の予定があり、ワシントンではメラニア夫人と行動を共にできないとのこと」。これを見る限り、夫人同士は余りウマが合わないようだ。フロリダでは一緒に日本庭園で鯉に餌を与える場面が演出されていたが、はた目にも距離感が感じられた。「女のカンは鋭い」というが、昭恵夫人はどうやらトランプ夫妻を全身で受け止めるのは時期尚早と感じているのかもしれない。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)