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浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

トランプ失脚工作に巨額マネーばら撒く「黒幕人物」…全米中のデモ参加者に日当支払い

文=浜田和幸/国際政治経済学者

 中国と周辺国との軋轢は「沸点に達している」とソロス氏が指摘するように、激化する一方であり、そうした目に見えるかたちで深刻化する事態を危惧してのことであろう。同氏の警告を待つまでもなく、こうした緊張状態が続けば、一触即発の事態もありうる。

 ソロス氏に言わせれば、万が一そのような事態になれば、「危機はアジアにとどまらず、中東、ヨーロッパ、そしてアフリカにまで広がる可能性が高い。なぜならアメリカの力が急速に衰えており、有効な歯止めをかけることができなくなっているからだ」。

 こうした事態を回避するためには、中国を国際的な金融及び安全保障のなかにいかに組み込むかという国際政治上の知恵が求められよう。しかし、トランプ大統領にはそうした知恵が感じられず、「一気に対立が戦争に拡大する恐れがある」と受け止めている様子だ。それゆえ、外交経験の豊富なヒラリー・クリントン元国務長官のほうが中国をうまく手なずけることができると考え、彼女を今でも支援していると思われる。

 アジア戦略に関しては、ソロス氏の発想はヒラリー・クリントンに近い。というより、ヒラリーにもビル・クリントンにも、多額の政治献金を重ね、ロシアを内部から転覆させようと企てる一方で、中国を自由経済社会に軟着陸させようとするのがソロス流といえよう。中国はすでにアメリカを凌駕するほどの経済力を貯えている。最新のプライスウォーターハウスクーパースの「長期展望2050」を見ても、ソロス氏が予測するように、中国の潜在的成長率は世界ナンバーワンである。

 そうであるがゆえに、ソロス氏の分析では「中国を関与させない国際政治は歴史的に禍根を残すことになる」。そうした観点から中国のリスクとチャンスを言葉巧みに宣伝する稀代の投資家を自負するため、トランプ流の「ロシア善玉、中国悪玉」の単純な区別は危険だという認識に立っているようだ。ソロス氏が推進する「アンチ・トランプ」の最大の狙いは、ここにある。

意図的に仕掛けるプロ

 また、ソロス氏はゴールドマン・サックスとも連携し、日本のアベノミクスにも深くかかわるようになっていた。日本銀行を通じて金融緩和という名の大量の資金を市場に投入することで、年率2%のインフレを実現しようとする安倍総理にとって、ソロス氏のアドバイスは極めて心強いものとなっていたようだ。

 しかし、このところ、安倍政権はトランプ詣でに忙しく、ソロス氏の情報を重用しなくなった。かつてソロス氏は自らを「一種の神ではないかと思ったことがある」と告白。それほど強烈な自己愛にもつながる自信家である。なんとか、自らのメンツにかけても、目障りなトランプ大統領を引きずり下ろそうと躍起になっているに違いない。

 トランプ氏もソロス氏もマネーゲームのプレイヤーだ。しかも、メディアを操り、こうした混乱を意図的に仕掛けるプロであることを忘れてはいけない。われわれは常に反対意見や多様な情報に接し、彼らの餌食にならない冷静な判断力を養うことが求められている。トランプ氏もソロス氏も決して万能ではない。ましてや神であることなど、あり得ない話。そうした情報戦に飲み込まれない自前の判断力が問われている。そうした力を身に付けることこそが、日本人のサバイバルにつながるだろう。

オバマ前大統領の動き

 わが国では今回の日米首脳会談の報道ぶりを見ても、トランプ大統領の一挙手一投足に官民挙げて関心が集中しているようだが、ここは逆張りではないが、「アンチ・トランプ運動の陰の仕掛け人」とも目される天才投資家ジョージ・ソロス氏の言動にも大いに注目する価値があるだろう。

 と同時に、オバマ前大統領の動きも無視できない。安倍総理と共に、広島やハワイのパールハーバーを訪れたことが記憶に新しい。そのオバマ氏がいまだワシントンに居を構えていることはあまり知られていない。表向きは娘の学校の都合ということだが、ソロス氏と手を組み、全米3万2000人のアンチ・トランプ活動家の元締めとしてワシントンから号令を出していると報じられている。

 最近では相次いでアメリカのメディアに登場し、「トランプ大統領の言動に心を痛めている」と発言。「このままではアメリカが分断国家になってしまう」と危機感を露わに。共和党内のアンチ・トランプ派とも一脈を通じる動きとして注目を集めている。先に述べたサンダース上院議員の動きも無視できないが、全米250カ所を越えるアンチ・トランプ事務所を支援するオバマ前大統領も同様である。

 熱い戦いはますます熱を帯びてきそうだ。トランプ大統領の下、ホワイトハウスでは人事をめぐるゴタゴタがくすぶっている。安倍総理夫妻とトランプ大統領夫妻がフロリダの別荘で夕食を楽しんでいる間も、トランプ氏の下にはホワイトハウスの首席補佐官や国家安全保障担当補佐官の更迭を求める声が届いていた。トランプ大統領を引きずり下ろそうとする動きは活発化する一方だ。日本とすれば、安倍・トランプの蜜月ぶりに惑わされることなく、アメリカとの関係のあり方を冷静に見極める必要があるだろう。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

浜田和幸/国際政治経済学者

浜田和幸/国際政治経済学者

国際政治経済学者。前参議院議員、元総務大臣・外務大臣政務官。2020東京オリンピック招致委員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士

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