話を「乳酸菌ショコラ」について戻し、問題となった「生きた乳酸菌が100倍とどく」という商品コピーについて後藤氏に伺った。
「摂取した全てではありませんが、もともと乳酸菌は粉末、ドリンク、ヨーグルトなど形を問わず生きたまま腸に届くものなのです。ですから『生きた乳酸菌が100倍とどく』という表現は、“生存比率”が100倍ということなのでしょう。
要するに、ロッテ側は一般的なヨーグルトなどで摂取するよりも、乳酸菌をチョコレートに包んだほうが生きたまま腸に届く比率がより高まったと言っているのです。
もちろん試験データに基づいた証拠はあり、その試験データは2015年12月22日に日東薬品工業のプレスリリースにて発表されています」(同)
説明しておくと「乳酸菌ショコラ」は先述のロッテ、日東薬品工業、京都大学の共同開発によって生み出された商品である。
「このプレスリリースを見てみると、行ったのはチョコレートに包んだ乳酸菌とチョコレートに包んでいない乳酸菌に分け、それぞれを人工胃液に入れるという試験管実験。その後にどれくらいの乳酸菌が殺菌され、どれぐらい生き残ったかという比較をしています。
この試験データによると、1時間経過で1ml当たり、チョコレートに包んでいなかった乳酸菌は100以下にまで数を減らし、逆にチョコレートに包んだ乳酸菌は100万もの数が生き残っていたとのこと。倍率で言うと“約1万倍”も生存比率に差が出たわけです。また2時間経過した時点ではチョコレートに包んだ乳酸菌の数はほとんど減らず、結果的に“約3万3千倍”にまで生存比率を伸ばしたという結果になっています」(同)
断言するには100億円規模の人体実験が必要
しかし、後藤氏曰く、「100倍とどく」と宣伝するためには人工胃液を用いた試験管試験では根拠として欠ける、とのこと。消費者庁が“景品表示法違反”の疑いを持ったのもこの点からなのだ。
「胃を通過した直後に十二指腸に行くわけですから、胃で生きているという試験をしたら腸まで生きて届くというのはあながち嘘ではありません。
ですが、問題はロッテが行った試験はあくまで“試験管内”であって、人間の“生体内”ではないこと。一般的に試験管内での試験結果が生体内で立証されないことは多々あるため、実際に生体内での試験を行わなければ『生きた乳酸菌が100倍とどく』と断言できないはずなのです。